研究概要 |
当院の臨床研究審査委員会で本研究実施の承認を得た。その後、MRCPとCTで分枝膵管型IPMNが疑われる94病変に対してEUS-FNAを施行した。うち、85病変で吸引された内容液の性状 (string sign: 粘稠度により粘液/漿液を鑑別する方法) から粘液性病変と診断され、また病理組織学および免疫組織化学的に胃型IPMN (MUC1, MUC2, MUC5AC: 陰性, 陰性, 陽性)と診断された。本邦で作成された診療ガイドライン上の切除適応病変は10例(細胞診で癌陽性: 1, 悪性を示唆する画像所見: 6, 有症状: 3例) あり、全例で切除が行われた。切除検体の病理組織学的診断で上皮内癌が4例、腺腫が6例であった。上皮内癌4例のうち、3例は術前のEUS-FNAで異型の強い上皮が採取されており、75%で術前に癌の診断が可能であった。また、残りの75例は画像診断により経過観察が行われているが、3例で明らかな病変の増大がみられ外科的切除が行われ、1例が上皮内癌であった。増大のみられた3症例の術前のEUS-FNAは軽度異型を示すのみであり、増大の予測は不能であった。 術前に良/悪性の鑑別するため、EUS-FNAにより採取された粘液のプロテオーム解析を行った。切除検体の病理診断が上皮内癌と腺腫であったものから粘液が十分に採取できた3例ずつ選択し、蛍光二次元電気泳動(two-dimensional difference gel electrophoresis, 2D-DIGE)による良/悪性間の変動スポットの検出を試みた。しかしながら粘液と混在している膵液、穿刺に伴う出血により混入した血漿成分の主要成分と思われる蛋白が強く発現し、質量分析法(Mass Spectrometry, MS)の標的となる部位の同定は困難であった。今後、前処理でアミラーゼ、リパーゼ、アルブミンなどを除去の上、2D-DIGEを実施予定である。また、ショットガン解析も実施予定である。
|