研究課題
基盤研究(C)
本研究は、動脈硬化性心血管病変に対する新たな治療法として、酸化的DNA塩基損傷修復(base excision repair:BER)機構の活性修飾と熱ショック蛋白(Heat Shock Protein: HSP)の相加的な心血管保護効果を利用して心血管リモデリングを制御する新規手法の確立をめざすものである。本年度は、まず核内において酸化的DNA塩基損傷の修復を担い、レドックス制御の転写活性を促進させ、核外において酸化ストレス軽減効果を発揮する多機能タンパクであるApurinic/apyrimidinic Endonuclease 1(APE1)に注目し、血管リモデリングに必須の内皮前駆細胞(EPCs)を用いて、その機能解析とリモデリングに及ぼす影響を明らかにした。マウス骨髄からEPCsを採取調整し、ヒト末梢白血球ゲノムからクローニングしたAPE1を遺伝子発現用アデノウイルスに組み入れ、これを用いてAPE1過剰発現細胞を調整した。また、APE1特異的SiRNAを作製し、lipofectamin法にて核酸導入することによりAPE1発現抑制細胞を調整した。まず始めにEPCsはAPE1を比較的豊富に発現する細胞であることが明らかにされた。過酸化水素(H2O2; 100~1000M)の暴露によってもEPCsのviabilityは保たれたが、接着能は濃度依存性に減弱した。すなわち、酸化ストレス環境下でEPCsは機能障害を呈することが示された。APE1過剰発現細胞では、酸化ストレス環境下での接着能低下が阻止され、逆にAPE1発現抑制細胞では接着能低下が促進された。これらのことは、血管リモデリングの第一段階であるEPCsの局所への接着能の維持はAPE1依存性であることを示唆するものである。さらに、この機序には局所の活性酸素消去機構の活性亢進が重要な役割を担っていることも明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
動脈硬化性心血管病変に対する新たな治療法として、酸化的DNA塩基損傷修復(base excision repair:BER)機構の活性修飾と熱ショック蛋白(Heat Shock Protein: HSP)の相加的な心血管保護効果を利用して心血管リモデリングを制御する新規手法の確立をめざす本研究において、心血管リモデリングの第一段階で機能する内皮前駆細胞を標的に、酸化的DNA塩基損傷修復活性とレドックス制御を持つ多機能タンパクであるAPE1の心血管リモデリングにおける機能と意義を明らかにした。我々の仮説どおり、APE1は内皮前駆細胞の機能維持に重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。すでに、ヒト末梢白血球ゲノムからクローニングしたAPE1を、遺伝子発現用アデノウイルスに組み入れ、これを用いてAPE1過剰発現細胞を調整しており、これを生体の動脈硬化病変の酸化ストレス環境下に適用することによって、心血管リモデリングの抑制効果を検証する予定であり、ほぼ計画どおりに研究は進行している。
本年度までに明らかにした酸化ストレス環境下における内皮前駆細胞でのAPE1の意義を踏まえ、次段階のin vitro研究を進め、さらにin vivoでの検証を行う。すなわち、多機能性抗酸化ストレス蛋白であるAPE1のいかなる機能が、血管リモデリング制御に最も重要であるのかを、APE1のレドックス制御特異的阻害剤であるE3330を用いたり、過剰発現細胞、ノックダウン細胞での各機能変化を検証することによって明らかにする。その後、APE1過剰血管内皮前駆細胞をマウスのワイヤー血管障害モデルの障害局所に導入することによって、血管リモデリング抑制効果を検証する。
次年度の研究費は、上記のEPCsをターゲットにしたAPE1の機能解析をin vitroで進めることと、in vivoでのリモデリング抑制効果を検証するために使われる。ほぼ全ては、研究材料と解析の消耗品に当てられる。
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すべて 雑誌論文 (18件) (うち査読あり 18件)
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