研究課題
腹部大動脈瘤は近年増加し全死亡原因の1-2%を占める。瘤破裂が生じると死亡率は60%に上る。大動脈瘤は単なる動脈硬化の晩期退行病変ではない。危険因子は喫煙や高血圧など動脈硬化と共通するが、コレステロール値と大動脈瘤による死亡率は相関せず相違点がある。MafBは大Maf群に属する転写因子で単球の分化やマクロファージ活性化に関係する。我々はアポE欠損マウスとDN-MafB/アポE欠損マウスにアンジオテンシンIIまたはニコチンを皮下投与し、大動脈瘤モデルを作成した。MafBが腹部大動脈瘤破裂に与える影響を検討しているが、まだ一定の傾向は明らかとなっていない。さらに例数を増やし、検討を行う予定である。またアポE欠損マウスの骨髄照射後に野生型およびDN-MafBマウスの骨髄移植を行い大動脈瘤破裂について検討する。DN-MafBマクロファージおよびMafB恒常的発現抑制細胞にTNF-α、interferon-γやleukotriene LTD4などのサイトカイン刺激や低酸素刺激により、大動脈瘤形成に関係するMMP-9や cathepsinなどのメディエーターの発現変化を検討している。腹部大動脈瘤に対する手術予定患者を対象にFDG PET/CTを行う。症候性と無症候性でFDG集積に差があるか、血中MMP-9との相関、手術標本におけるMMP-9やMafBとの関係を検討する。さらに薬剤投与前後でFDG PET/CTを撮像し、FDG集積低下と血中メディエーター低下や手術標本におけるMMP-9発現との関係を検討する。
3: やや遅れている
動物実験及び細胞実験に関しては、例数を増やしながら順調に進んでいる。しかし臨床研究が遅れている状況にある。これは、近年腹部大動脈瘤の治療が大きく様変わりし、開腹手術よりステントを用いた血管内治療が主流になっていることと関係している。当院ではステント内挿術が手術の大半を占めるに至り、症例の蓄積が進んでいない状況にある。
動物実験及び細胞実験は当初の計画のとおりに進行する予定である。臨床研究に関しては、手術標本との対比が難しいことより、血中単核球を採取し、フローサイトメトリーでMafBの発現量と腹部大動脈瘤の進展との関係を検討する。
腹部大動脈瘤マウスモデルの作成には、時間を有する。アポE欠損/マクロファージ特異的MafBドミナントネガティブマウスにアンギオテンシンIIまたはニコチンを腹腔内投与し、大動脈瘤の形成および破裂を観察するのに、例数がまだ不十分である。臨床研究の分野でも腹部大動脈瘤の手術症例が減少しており、症例蓄積に時間を要する。上記腹部大動脈瘤モデルマウスの解析を追加する。さらに骨髄移植を用いた実験を行う。アポE欠損マウスの骨髄照射後に野生型およびDN-MafBマウスの骨髄移植を行い、MafBが大動脈瘤形成・破裂に与える影響を検討する。腹部大動脈瘤患者のPET/CTによる集積と単核球内のMafB発現の関係を調べる。
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