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2012 年度 実施状況報告書

高周波イリゲーションカテーテル焼灼法による心腎自律神経系の機能と構造修飾の検証

研究課題

研究課題/領域番号 24591036
研究種目

基盤研究(C)

研究機関新潟大学

研究代表者

池主 雅臣  新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40303151)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード高血圧
研究概要

高血圧の新しい非薬物治療法である(腎神経系への高周波カテーテルアブレーション)が安全で有益に臨床応用されるように、研究初年度の24年度は以下について実験的に検証した。①腎神経系が全身の血行動態と中枢の自律神経興奮を調整する機序を検討した。②腎動脈内からの高周波アブレーションが血管周囲に分布する腎神経系の構造と機能に与える効果を病理組織学的および電気生理学的手法を用いて検証し、治療に適したアブレーションモードの初期モデルを構築した。
(1):腎神経系が血行動態と自律神経興奮を調節する機序を検証した。腎動脈内から神経電気刺激を行うと血圧・心拍が徐々に上昇し、刺激を中止すると血圧・心拍が徐々に低下することを確認して報告した。この反応は星状神経節を電気刺激した際のものと類似しており、腎神経系興奮を介した中枢への入力が全身の交感神経緊張を亢進させたものと考えられる。心拍変動を周波数スペクトラム解析したところ、神経電気刺激によって血圧が上昇した際に、心臓への交感神経緊張が亢進する所見が観察された。
(2):腎神経系への高周波カテーテルアブレーション治療の安全性・治療効果を検証した。オープンイリゲーションカテーテルを用いた初期実験では、温度・インピーダンスモニターにおいて、出力(15W)の通電を腎動脈内で安全に行うことができた。15Wの通電では腎動脈造影において閉塞・狭窄は見られなかった。HE染色による腎動脈の組織学的検討においては、高周波カテーテルアブレーション後に腎動脈の中膜と外膜におよぶ傷害は観察されなかった。高周波カテーテルアブレーション後の電気刺激では、治療前にみられた血圧・心拍上昇反応が消失(または減弱)した。この結果は腎動脈内からの高周波カテーテルアブレーションが、自律神経求心路を介して中枢性の交感神経緊張を修飾したことを示す所見して報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高血圧の新しい非薬物治療法である(腎神経系への高周波カテーテルアブレーション)を安全かつ有益に臨床応用されるために、研究初年度(24年度)の目標にあげた項目の実験的検証をおおむね順調に進展させることができた。自己点検評価の理由は以下のとうりである。
(1)腎動脈自律神経系への神経電気刺激を用いた介入に成功し、実験系を確立することができた。(2)腎動脈内から有効なエネルギーの高周波通電を行なう実験手法を確立することができた。(3)腎動脈内から神経電気刺激を行うと血圧・心拍が徐々に上昇し、刺激を中止すると血圧・心拍が徐々に低下することを確認して報告した(2012年米国心臓病学会:AHA、2012年日本循環器学会:JCS)。(4)オープンイリゲーションカテーテルを用いて、温度・インピーダンスのモニターを行なうことで、15Wの高周波通電を腎動脈内で安全に行うことができた。高周波アブレーション後の腎動脈造影において閉塞・狭窄は見られなかった。HE染色による腎動脈の組織学的検討でも、腎動脈の中膜と外膜におよぶ傷害は観察されなかった。(4)高周波カテーテルアブレーション後の神経電気刺激では、治療前にみられた血圧・心拍上昇反応が消失(または減弱)することが確認できた。これは腎動脈内からの高周波カテーテルアブレーションが、自律神経求心路を介して中枢性の交感神経緊張を修飾したことを示す所見して初期成績を報告するに至った(Hypertension 2013に論文報告, 2012年米国心臓病学会:AHA、2012年日本循環器学会:JCS)。

今後の研究の推進方策

今後の研究実施計画
腎神経系が血行動態と自律神経興奮を調節する機序、腎動脈からの高周波カテーテルアブレーションが血圧調整と周辺組織に与える影響、腎神経系と心臓電気興奮の関連について、電気生理学的手法と病理組織学的分析法を用いての実験的検証をさらに展開する。ビーグル犬を静脈麻酔下に人工呼吸管理を行う。オープンイリゲーションカテーテルを腎動脈に挿入する。(1)腎動脈からの神経電気刺激:イリゲーションカテーテル先端から電気刺激を行い、血圧・心拍数とともに、心臓自律神経興奮の変化を心拍変動スペクトラム解析で検証する。アドレナリン・ノルアドレナリン・電解質等の神経体液性因子を測定する。25年度以降は、神経電気刺激の出力と血圧変動の関係、腎動脈内の刺激部位による血圧反応の相違について検証する。(2)腎動脈の高周波カテーテルアブレーション:カテーテルアブレーションはオープンイリゲーションシステムを用いて施行する。通電出力を変えて、腎動脈から安全に高周波通電ができるモードを構築する。(3)病理学組織学的評価:左右の腎臓を腎動静脈とともに摘出してホルマリン固定する。染色標本を作製して病理組織学的な分析を行なう。病理学組織学的評価についてはH-E染色に加えて特殊染色を行ってその詳細を分析する。高周波カテーテルアブレーションが腎動脈と腎自律神経系の構造に与える影響を検証する。
研究費は上記の実験的検討を行なうための材料経費と研究結果を分析報告するための経費として使用する。

次年度の研究費の使用計画

研究費は上記の実験的検討を行なうための材料経費と研究結果を分析報告するための経費として使用する。
具体的には、実験動物の購入、高周波カテーテルアブレーションを行なうイリゲーションカテーテルとカニュレーションチューブ、電気刺激を行うための電極カテーテルと電気ケーブル、心拍・血圧を測定するためのカテーテルキット、心電図記録用の電極と記録紙、自律神経興奮を分析するためのケーブル類、コンピュータ解析を行なうための消耗品、実験中に採取する血液サンプル(血中カテコラミンなど)を分析するための費用、病理組織を作成する費用、組織の固定・染色を行なうための試薬の費用、その他の実験と解析を行うための消耗品の費用が含まれる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Blood pressure and autonomic responses to electrical stimulation of the renal atrerial nerves before and after ablation of the renal artery2013

    • 著者名/発表者名
      Chinushi M, Izumi D, Iijima K, Suzuki K, Furushima H, Saitoh O, Furuta Y, Aizawa Y, Iwafuchi M
    • 雑誌名

      Hypertension

      巻: 61 ページ: 450-456

    • DOI

      doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.111.00095.

    • 査読あり
  • [学会発表] Site-specific Differences in the Renal Nerve Stimulation-induced Blood Pressure Response and Histological Effects of Radiofrequency Renal Artery Ablation2013

    • 著者名/発表者名
      Chinushi M, Izumi D, Iijima K, Suzuki K, Saito O, Honma, Satoh A, Furushima H, Iwafuchi M.
    • 学会等名
      日本循環会学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130315-20130317
  • [学会発表] J 波出現様式に対する自律神経興奮と心室再分極の関与:ホルター心電図を用いた検討2013

    • 著者名/発表者名
      齋藤修, 池主雅臣, 鈴木克弥, 大塚英明, 樋口浩太郎, 阿部暁, 杉浦広隆
    • 学会等名
      日本循環会学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130315-20130317
  • [学会発表] Hemodynamic Responses and Histological Effects of Radiofrequency Catheter Ablation to Renal Artery Sympathetic Nerve2012

    • 著者名/発表者名
      Chinushi M, Izumi D, Iijima K, Suzuki K, Furushima H, Aizawa Y, Iwafuchi M.
    • 学会等名
      American Heart Association
    • 発表場所
      ロサンゼルス (アメリカ)
    • 年月日
      20121105-20121108

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公開日: 2014-07-24  

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