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2013 年度 実施状況報告書

高周波イリゲーションカテーテル焼灼法による心腎自律神経系の機能と構造修飾の検証

研究課題

研究課題/領域番号 24591036
研究機関新潟大学

研究代表者

池主 雅臣  新潟大学, 医歯学系, 教授 (40303151)

キーワード高血圧
研究概要

25年度は以下について検証した。①カテーテルを介した腎動脈内からの神経電気刺激が腎自律神経を興奮させる過程、血行動態と中枢性自律神経興奮の変化を検討した。②腎動脈周囲の自律神経分布について病理組織学的に検討した。③腎動脈内からの高周波アブレーションが腎動脈と腎自律神経系の与える効果について検討した。④腎自律神経興奮にで惹起される不整脈について検証した。以下の所見を得て報告した。(1)腎動脈内からカテーテルを介して神経電気刺激を行うと、血圧・心拍が30秒程度をかけて上昇し、電気刺激を中止すると血圧・心拍は数分かけて低下した。この血圧・心拍反応の経過は、頸部の星状神経節を直接電気刺激した際のものと類似しており、腎臓からの求心性交感神経刺激が、脳神経中枢を介して全身の交感神経緊張を亢進させたと思われた。昇圧時に血中エピネフリンが上昇したことも、全身の交感神経興奮が亢進したことを支持する。(2)高周波カテーテルアブレーションによる腎自律神経興奮の修飾の有効性と効果を検証する実験で以下の結果を得た。腎動脈の狭窄・閉塞などの合併症は、15W通電では見られなかった。25Wの通電を行うと腎動脈の狭窄・閉塞が確認された。神経電気刺激による昇圧反応は、高周波通電後に抑制された。(3)構造学的検討で以下の結果を得た。HE染色・NF染色を用いて腎動脈と周囲神経の検討を行った。まず自律神経が腎動脈周囲を走行し、その分枝が血管外膜・内膜に分布する様子を確認した。15W通電では腎動脈・腎自律神経ともに障害は軽度であったが、25W通電を行うと内皮・中膜に広範囲の障害が観察された。(4)腎自律神経興奮と不整脈発症について以下を得た。腎動脈内から神経電気刺激を行うと、一部の実験で心室性期外収縮が誘発された。高周波カテーテルアブレーション後の神経電気刺激では、不整脈の誘発が抑制された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高血圧の新しい非薬物治療法である(腎神経系への高周波カテーテルアブレーション治療)を安全かつ有益に臨床応用されるために、25年度の目標にあげた項目の検証をおおむね順調に施行することができた。自己点検評価の理由は以下のとうりである。
(1)神経電気刺激法を用いた腎交感神経賦活の方法論を確立することができた。(2)腎動脈内カテーテルアブレーションの通電方法を確立することができた。またカテーテルアブレーションによる腎自律神経興奮の機能的修飾の効果を検証できた。(3)オープンイリゲーションカテーテルからの15W通電と25W通電の評価を腎動脈造影を用いて行った。15W通電では造影画像上の異常は指摘できなかったが、25W通電では一部の検討で腎動脈の閉塞・狭窄が生じた。(4)組織学的検討を発展させたところ、15W通電では腎動脈の中膜・外膜におよぶ傷害はごく軽度であったが、25W通電では広範な傷害が認められた。(4)高周波カテーテルアブレーション後の神経電気刺激では、処置前みられた昇圧・速迫反応が著明に減弱して、腎動脈内からの高周波カテーテルアブレーションが腎臓から神経中枢への交感神経求心路に抑制的効果を示したことが示唆された。

今後の研究の推進方策

今後の研究実施計画
本年初頭に従来の方法で行われた(腎神経系への高周波カテーテルアブレーヨン治療)は安全性が高いものの、降圧における有効性は証明できなかったという重要な報告がなされた。この結果の要因には、血圧調節機構における腎自律神経の真の役割・高周波カテーテル治療の効果判定法が確立されていないことが含まれると推察される。これらの状況を背景に、以下の問題を視野に研究を進める。すなわち、(1)腎自律神経系が全身の交感神経興奮・血行動態を調節する機序の詳細を明らかにする。腎臓からの求心性交感神経興奮と遠心性交感神経興奮の役割についても検証する。(2)これまでに方法論を確立した(腎自律神経電気刺激法)が、高周波カテーテルアブレーヨン治療の効果判定・エンドポイントの決定に応用できるか検証する。(3)腎自律神経系の機能的修飾と高周波通電による構造的障害の関連について、電気生理学的手法と病理組織学的分析法を用いて検証する。適度な降圧を得るための自律神経修飾には、どの程度の構造学的障害が必要であるか検証して、安全で有効なアブレーションモードの確立を目指すべく研究に展開する。
研究費は上記の検証を行なうための材料経費と研究結果を分析報告するための経費として使用する。

次年度の研究費の使用計画

当該施設の実験施設に改修工事があり予定した物品購入に遅れが生じたために、予定額の一部が年度内に使用できなかった。
前年度使用できなかった経費は最終年度の研究費用と合わせて、予定した研究課題の遂行のために使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Catheter-based Renal Autonomic Nerve Ablation: Implication of Discrepant Results between Electrical Nerve Stimulation (ENS) Induced Hemodynamic Response and Histological Examinations.2014

    • 著者名/発表者名
      Chinushi M, Izumi D, Iijima K, Suzuki K, Saito O, Furushima H, Satoh A, Tanaka Y, Iwafuchi M
    • 学会等名
      The 78th Annual scientific Meeting of the Japanese Circulation Society
    • 発表場所
      Tokyo
    • 年月日
      20140321-20140323
  • [学会発表] 高周波カテーテルアブレーションによる腎自律神経の機能組織学的修飾2013

    • 著者名/発表者名
      池主雅臣
    • 学会等名
      日本不整脈学会カテーテルアブレーション関連秋季大会2013
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20131101-20131103
    • 招待講演
  • [学会発表] 神経電気刺激と高周波通電による腎動脈自律神経興奮への介入2013

    • 著者名/発表者名
      池主雅臣、鈴木克弥、斉藤修、飯嶋賢一、和泉大輔、佐藤光希、古嶋博司、南野徹、岩渕三哉
    • 学会等名
      第30回日本心電学会学術集会
    • 発表場所
      青森
    • 年月日
      20131011-20131012
  • [図書] 高血圧に対する腎動脈交感神経アブレーション2014

    • 著者名/発表者名
      斉藤修・池主雅臣
    • 総ページ数
      20
    • 出版者
      医薬ジャーナル社

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公開日: 2015-05-28  

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