研究課題
基盤研究(C)
本研究の1番目の目的は、国内外の研究者の協力のもと、突然死を克服すべく特発性不整脈症候群症例を集積して遺伝的背景とこれに関連した臨床像を明らかにし、不整脈発作の予知とリスク層別化に用いることであるが、平成24年度においては1228例の不整脈に罹患した症例を国内外より集積した。これらの症例において心臓ナトリウムチャネル遺伝子SCN5Aの遺伝子発現を調節しているプロモーター領域のスクリーニングを行い、Brugada症候群、早期再分極症候群、特発性心室細動、洞不全症候群、房室ブロックならびに心房細動の各々の疾患に罹患した症例においてSCN5Aプロモーターの変異を同定した。また同定した変異の機能解析を行って、変異がプロモーター活性の低下をもたらすことを明らかにした。これは変異にがナトリウムチャネルの発現量の低下からナトリウム電流がの減少をもたらし、不整脈を発症する機序を示している。本研究の二番目の目的は、次世代シークエンス法を応用して不整脈症候群の新たな遺伝的背景を明らかにして不整脈の機序を検討すると共に、遺伝子検索の新たな手法を構築することであるが、平成24年度には、次世代シークエンス法を用いて同時に約250種の遺伝子をスクリーニングできるアッセイを新たに構築した。この方法を用いて既知の遺伝子に変異が同定されなかった35症例において網羅的なスクリーニングを施行し、今までに報告のない新たな不整脈の原因遺伝子候補を多数同定した。そのうちの一つの遺伝子の変異を、同じ疾患に罹患した他の症例の遺伝子配列を従来の方法で調べることによって同定しており、この遺伝子が新たな現遺伝子であることを示唆している。
1: 当初の計画以上に進展している
すでに国内外の研究者の協力のもと、様々な不整脈に罹患した1000例以上の症例を集積し、遺伝子解析を行っており、心臓ナトリウムチャネル遺伝子SCN5Aのプロモーター領域が様々な不整脈発症の原因であることを新たに明らかにしており、本研究は当初の計画よりも進展している。また、次世代シークエンス法を応用し、心臓に発現して電気生理活動に関与する約250種の遺伝子を同時にスクリーニングできるアッセイの構築ならびに実際の応用も開始しており、さらに新たな不整脈の原因遺伝子の候補を多数同定していることも、本研究の高い達成度である。
SCN5Aプロモーターの変異を有する症例の臨床像をまとめ、研究成果を発表する。また、変異の情報は症例に還元し、治療法の選択や家族が不整脈をきたすリスクの層別化に応用する。新たに構築した次世代シークエンス法のアッセイは新たに遺伝子数を5割程度増加させて、96症例において遺伝子スクリーニングを行う。この方法で同定した不整脈の新たな原因遺伝子が、実際に不整脈をきたす機序を解明すべく、変異がもたらす機能異常の解析を行う。
該当なし
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