研究課題
突然死を来しうる特発性不整脈症候群は遺伝性疾患であることが広く知られているが、原因遺伝子は十分に解明されておらず、その機序は不明な部分が多い。 このため不整脈を来たすリスクの層別化に必要な知見は十分でなく、また不整脈発作を予防するための新たな治療法の開発も必要である。 本研究は、特発性不整脈症候群の臨床像並びに遺伝的背景と不整脈発生の機序の解明と、遺伝子型を考慮した新たな個別化治療(Tailar made therapy)の開発を目標とする。本年度は以下のような成果を得た。1. 様々な不整脈症候群の原因となる新たな原因遺伝子の同定心臓ナトリウムチャネル遺伝子であるSCN5Aのプロモーター領域が、Brugada症候群、早期再分極症候群、房室ブロック、洞不全症候群ないしは心房細動の各々の原因遺伝子であることを発見した。これは、イオンチャネル遺伝子のプロモーター領域が不整脈の発症に関与することを示した初めての研究である。2. 不整脈症候群の新たなの関連遺伝子の同定のための次世代シークエンス法の応用次世代シークエンス法を応用して、心臓に発現しており電気整理活動への関与が示唆されている遺伝子約450種の塩基配列を同時に同定するアッセイを構築した。これを用いて若年性の重症型QT延長症候群の原因遺伝子を同定し、現在本研究の論文はRevise過程である。また、次世代シークエンス法を用いた国際的なゲノム関連研究に佐渡研究の協力のもと携わり、Brugada症候群に関係する新たな遺伝子を解明した(Nature Genetics 2013)。
1: 当初の計画以上に進展している
新たな不整脈症候群の原因遺伝子を複数同定した。また次世代シークセンス法を応用して心臓に発現して不整脈の発症に関与しうる遺伝子約450種を同時にスクリーニングするアッセイを構築した。世界的な共同研究に参加し、特発性心室細動の一種であるBrugada症候群の新たな関連遺伝子を同定し、その成果はNature Geneticsに掲載された。
本研究にて構築した、心臓に発現して不整脈の発症に関与しうる遺伝子約450種を同時にスクリーニングする次世代シークセンス法アッセイを、さらに多くの症例に応用して、不整脈症候群の新たな原因遺伝子を同定する。また遺伝子系に基づく不整脈患者の個別化治療の確立を目指す。
試薬の価格が年度当初の予定より低下したために繰越金が発生した。次年度に消耗品費として使用する。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件)
Int J Cardiol
巻: 172 ページ: 519-522
10.1016/j.ijcard.2014.01.036
巻: 172 ページ: e111-113
10.1016/j.ijcard.2013.12.121
Heart Rhythm
巻: 10 ページ: 542-547
10.1016/j.hrthm.2012.12.035
巻: 165 ページ: e21-23
10.1016/j.ijcard.2012.10.074
Circ J
巻: 77 ページ: 1689-1690
Journal of Arrhythmia
巻: 29 ページ: 134-137
J Am Coll Cardiol
巻: 61 ページ: 1183-1191
10.1016/j.jacc.2012.12.025
PLoS Genet
巻: 9 ページ: e1003364
10.1371/journal.pgen.1003366
Nature genetics
巻: 45 ページ: 1044-1049
10.1038/ng.2712