ビーグル犬8頭を①placebo群と②irbesartan群の2群に分け、各薬剤の投与下で毎分400回の心房高頻度刺激を4週間施行した。試験期間中は経時的に心臓電気生理検査および心臓超音波検査の指標を測定した。4週間の心房高頻度刺激により、左室機能は両群で同等に低下した(左室拡張末期径LVDd はplacebo群で31.5 mm、irbesartan群で27.8 mm、p=NS、に拡張、左室駆出分画LVEFはplacebo群で24.3%、irbesartan群で23.7%、p=NS、へと低下)。Placebo群で見られた心房細動持続時間の延長は、irbesartan群では抑制された(心房細動持続時間、placebo群で26.3±11.0 s、irbesartan群で1.60.9 s、P=0.02)。心房細動誘発率の上昇はirbesartanによってやや抑制される傾向があったが、placeboと比較して有意な差はなかった(心房細動誘発率、placebo群で20.0±2.0% vs. irbesartan群で70.0±3.6%、P=0.08)。心房不応期の短縮は両群で同等であった。Irbesartanは心房高頻度刺激心房高頻度刺激モデルにおいて心房細動持続時間の延長を抑制した。心房線維化の組織学的な評価では、irbesartanによる線維化などの心房の構造的リモデリングの抑制が確認された。心房有効不応期などの電気生理学的指標への影響はplaceboと差がなかったことから、線維化などの心房の構造的リモデリングを抑制し心房細動持続時間を短縮したと考えられた。さらに分子生物学的検討も行い心房細動リモデリングの細胞内伝達機序や薬剤の詳細な作用機序を検討した。
|