研究課題/領域番号 |
24591040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
水牧 功一 富山大学, 臨床研究・倫理センター, 特命准教授 (90313618)
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研究分担者 |
市田 蕗子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30223100)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬剤性QT延長症候群 / 心房細動 / ホルター心電図 / 遺伝子 / イオンチャネル |
研究概要 |
発作性心房細動(PAF) 25例を対象に24時間ホルター心電図をSCM-8000で2時間以上持続するPAF発作時と洞調律時のQT間隔(CM5誘導)を自動計測した。一次回帰直線によるQT-RR関係の解析においてRR間隔をa)1心拍毎、b) 1~10心拍前の平均RR間隔、c)modified RR 間隔 (Larrouae CE et al. Heart Rhythm 2006)を用いた 3種類を解析し同一記録日の洞調律と比較した。a)c)のQT/RR slopeはPAF発作0-1時間より4-5時間では小さくなったが洞調律に復帰後0-1時間より4-5時間で増大した。徐脈時のQT延長の程度はAFの持続により小さくなったが、洞調律に復帰後徐々に増大した。薬剤性QT延長によるTdPのリスクの評価にmodified RR間隔を用いた心房細動時のQT/RR関係の解析の有用性が示された。 TdPを発症した薬剤性QT延長症候群のAF患者でホルター心電図でのQT/RR関係を解析し、当施設の健常対照群と比較した。QT/RR slopeが健常者より有意に増大した例でKCNE1遺伝子の単一塩基多型(SNP)G38Sが認められたがG38Sは頻度の多いSNPでQT延長への関与は不明であった。そこで安静時心電図でQT延長を認めG38S SNPを有する例でホルター心電図でQT/RR関係を解析し当施設でLQT1, LQT2と診断された症例と比較したところ、LQT2と同様のQT/RR slopeの増大を認めた。G38 SNPを発現させたsingle cellを用いた電気生理学的検討でG38 SNPはKCNH2電流を抑制し、さらにIkr blockerや低K血症によりその程度が増大した。すなわち、G38 SNPはQT延長を起こしやすい条件においてLQT2と同様のQT延長をきたしTdPのリスクがあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)心房細動(AF)の患者の 24時間ホルタ一心電図を用いた QT/RR 関係の解析法の確立 発作性心房細動(PAF)25例を対象に2時間以上持続するPAF発作時と洞調律時のQT間隔(CM5誘導)を自動計測し一次回帰直線によるQT-RR関係の解析においてRR間隔をa)1心拍毎、b) 1~10心拍前の平均 RR間隔、c)modified RR 間隔を用いた。その結果、PAF発作0-1時間より4-5時間ではa)c)のQT/RR slopeは小さくなったが洞調律に復帰後0-1時間より4-5時間ではQT/RR slopeは増大した。AFの持続により徐脈時のQT延長の程度は小さくなるが、洞調律に復帰後は時間経過とともに徐脈時のQT延長の程度が増大した。薬剤性QT延長によるTdPのリスクの評価にmodified RR間隔を用いた心房細動時のQT/RR関係の解析の有用性が示されAF患者におけるQT/RR関係の新たな解析法を確立することができた。 2)AF患者の QT/RR 関係へのIII群抗不整脈薬の効果の検討 " 持続性AF患者における皿群抗不整脈薬の投薬前後での QT/RR 関係の解析は進行中であり平成25年度以降の症例を蓄積し集計、解析予定である。 3)薬剤性 QT 延長症候群と遺伝子異常の解析 TdPを発症した薬剤性QT延長症候群でQT/RR slopeが健常者より有意に増大した症例でKCNE1遺伝子G38S SNPが認められAF例におけるQT/RR関係の解析が背景にある遺伝子異常の推定に有用であることが示された。SNPを含めた遺伝子異常とQT/RR 関係の異常との関連(genotype-phenotype relation)を検討、薬剤により顕性化する潜在性のQT延長の遺伝子異常の有無を QT/RR 関係の解析から推定することを目的として平成25年度以降さらに症例を集積、解析予定である。
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今後の研究の推進方策 |
洞調律化の目的で投与されたKrチャネル遮断作用を有する皿群抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール、べプリジル)の投薬された持続性心房細動の患者を入院例のみならず、外来で上記薬剤を投与された症例も対象として集積する。 薬剤性 QT延長症候群の危険性のある薬剤(循環器系、非循環器系)が投与されている患者について循環器内科にみならず他の内科や小児科の入院、外来例についても洞調律、心房細動を問わず、同意が得られた症例で24 時間ホルター心電図を施行しQT/RR 関係を解析することで症例数を増加ざせる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、薬剤性 QT延長症候群の危険性のある薬剤が投与され24 時間ホルター心電図でQT/RR 関係の異常を認めた症例のうち遺伝子解析を行った症例数が予定より少なかった。そのため遺伝子解析に必要な消耗品の費用が予算額より下回ったことによって、次年度へ繰り越す助成金(次年度使用額)が生じた。 次年度は、まず持続性心房細動の患者を対象に、洞調律化の目的で投与された皿群抗不整脈薬の投薬前後で24時間ホルタ一心電図を記録、発作性心房細動での検討から確立された QT/RR関係の解析法を用いて、心房細動中の QT/RR 関係への皿群抗不整脈薬の効果を検討する。洞調律に復帰した患者では洞調律での QT/RR 関係と比較、薬剤性 QT延長症候群の主な原因とされるIKr電流の低下が心房細動中の QT/RR 関係に及ぼす影響を明らかにする。さらに、薬剤性 QT延長症候群の危険性のある薬剤が投与されている患者で洞調律、心房細動を問わず、同意のもと 24 時間ホルター心電図を施行しQT/RR 関係を解析する。当施設で以前 422例の健常者の QT時間のデータベース(Sugao M, et al. Heart 2006)を基に、年齢、性別をマッチさせた健常者の QT/RR関係と比較し異常の有無を判定する。健常対照群の平均より標準偏差の2倍以上のQT/RR 関係の偏位を認める例で同意が得られた場合には遺伝子解析を行い K チャネル遺伝子異常、Na チャネル遺伝子異常、Caチャネル遺伝子異常について検討する。得られた血液検体から末梢血リンパ球を採取し、EBウィルスを用い細胞株を作成し、これら株化細胞から DNA 遺伝子を抽出し遺伝子異常を検索する。 平成 24 年度からの上記研究を継続し2年間の研究成果をまとめ検討を行い。学会発表および学会誌への研究成果の発表を行う。
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