研究課題/領域番号 |
24591040
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
水牧 功一 富山大学, 臨床研究・倫理センター, 特命准教授 (90313618)
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研究分担者 |
市田 蕗子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (30223100)
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キーワード | 薬剤性QT延長症候群 / 心房細動 / ホルター心電図 / 遺伝子 / イオンチャネル |
研究概要 |
発作性心房細動(PAF)例にHolter心電図を施行し、心房細動(AF)時と洞調律時のQT間隔を自動計測した。AF時のRR間隔を1心拍毎、10心拍の平均 RR間隔、modified RR 間隔を用いた 3法で比較したところ、10心拍平均のQT/RR関係が洞調律復帰後のQT/RR関係を最もよく反映していた。 一方、AF中1心拍毎のQT/RR関係はAFの持続による変動を認め、QT/RR関係のslopeはAF発作0-1時間より4-5時間で減少、洞調律に復帰後0-1時間より4-5時間で増大した。この傾向はQT延長をきたす抗不整脈薬投与例で顕著となった。PAF例ではAF持続によりQTが短縮し洞調律復帰後は徐々にQT延長し、薬剤性QT延長によるtorsade des pointes (TdP)に関与することが示されこの結果は論文に投稿中である。 Holter心電図でLQT2と同様のQT/RR slopeの増大を認めた薬剤性QT延長症候群のAF症例で、KCNE1遺伝子の単一塩基多型(SNP) G38Sが認められた。Single cellを用いた電気生理学的基礎実験でG38 SNPはKCNH2電流を抑制し、Ikr blockerや低K血症によりその程度が増大した。すなわち、G38 SNPはQT延長を起こしやすい条件においてLQT2と同様のQT延長をきたしTdPのリスクがあることが示唆され、本研究の結果は論文で発表した(Yamaguchi Y, Nishide K, Kato M, Hata Y, Mizumaki K, Kinoshita K, et al. Circ J 2014;78:610-618).またQT延長を認め別のKCNE1遺伝子SNP(D85N)を有する例のHolter心電図解析でも、遺伝性QT延長症候群と同様のQT/RR関係の異常が認められ、学会報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心房細動の患者の 24時間ホルタ一心電図を用いた QT/RR 関係の解析法の確立については、前年度から継続して、発作性心房細動例を対象に心房細動発作時と洞調律時のQT間隔(CM5誘導)を自動計測、一次回帰直線によるQT-RR関係におけるRR間隔を1心拍毎、 1~10心拍前の平均 RR間隔、modified RR 間隔の3法で検討した。その結果、心房細動時には10心拍平均したQT/RR関係が洞調律復帰後のQT/RR関係を最もよく反映することが明らかになった。 一方、発作性心房細動例では心房細動の持続により1心拍毎のQT/RR関係が変動する現象が認められたが10心拍平均のQT/RR関係では明らかではなかった。心房細動の持続とともに徐脈時のQT延長の程度が小さくなり、洞調律復帰後はその程度が徐々に増大することが示され、心房細動中のQT/RR関係についての新たな知見を得て、論文に投稿することができた。 心房細動患者の QT/RR 関係へのIII群抗不整脈薬の効果の検討については、前述の心房細動の持続とともに徐脈時のQT延長の程度が小さくなり、洞調律復帰後はその程度が徐々に大きくなる傾向は、QT延長を来すI群、III群抗不整脈薬を内服した症例でより顕著となり薬剤性QT延長によるtorsade des pointes (TdP)に関与することを示すことができた。一方、持続性心房細動患者における皿群抗不整脈薬の投薬前後での QT/RR 関係の解析は補記続き症例を蓄積し集計、解析予定である。 薬剤性 QT 延長症候群と遺伝子異常の解析は、TdPを発症した薬剤性QT延長症候群でQT/RR slopeが健常者より有意に増大した症例でKCNE1遺伝子の単一塩基多型(SNP)であるG38Sのみが認められ、心房細動患者におけるQT/RR関係の解析が背景にある遺伝子異常の推定に有用であることが示され論文に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
心房細動中の12誘導心電図からQT延長例を抽出する。心房細動中のQT延長より簡便に多く検出するため、心電図の連続的なwavelet解析を行う。そのための解析ソフトウエア-を導入済みである。同意が得られた症例でホルター心電図を施行し、QT/RR関係を検討し徐脈時のQT延長の程度が大きい症例の集積を図る。これらの検討を、抗アレルギー薬や抗菌剤などの非抗不整脈薬を投与されている症例にも行い、薬剤誘発性QT延長をきたす症例を検出し、同意が得られた症例では遺伝子解析を行い、薬剤性QT延長例の背景となる遺伝子異常について解析を進める。 洞調律化の目的で投与されたKrチャネル遮断作用を有する皿群抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール、べプリジル)の投薬された持続性心房細動症例(入院例、外来例)をさらに集積してQT/RR関係を検討し、心房細動中のQT/RR関係へ上記薬剤が及ぼす影響の検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、薬剤性QT延長症候群の症例数の集積が予定よりやや少なく、またIII群抗不整脈薬を投与された持続性心房細動例におけるHolter心電図の解析症例数もやや少なかったため、これらの症例で同意を得られた例での遺伝子解析例数が予定を下回った。そのため遺伝子解析に必要な消耗品費が予算額より下回ったことによって、次年度へ繰り越す助成金(次年度使用額)が生じた。 次年度は平成25年度の研究を継続し、持続性心房細動の患者を対象に、洞調律化の目的で投与された皿群抗不整脈薬の投薬前後で24時間ホルタ一心電図を記録、発作性心房細動での検討から確立された QT/RR関係の解析法を用いて、心房細動中の QT/RR 関係への皿群抗不整脈薬の効果を検討する。薬剤性 QT延長症候群の危険性のある薬剤が投与されている患者で同意のもと 24 時間ホルター心電図を施行しQT/RR 関係を解析する。健常対照群の平均より標準偏差の2倍以上のQT/RR 関係の偏位を認める例で同意が得られた場合には遺伝子解析を行い K チャネル遺伝子異常、Na チャネル遺伝子異常、Caチャネル遺伝子異常について検討する。上記研究を継続し3年間の研究成果をまとめ検討を行い、学会発表および学会誌への研究成果の投稿を行う。
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