研究課題
PCSK9は細胞内コレステロールプールの減少によりSREBP2活性化を介し誘導され、LDL受容体の細胞内分解を促進すると考えられている。したがって、その機能亢進型変異は家族性高コレステロール血症(FH)の原因となり、機能低下型変異は低βリポ蛋白血症の原因となる。われわれが見出したPCSK9 E32K変異は高頻度変異と考えられ、一般人の1.7%に存在すると考えられている。そのLDL-C値の分布は正常者とLDL受容体変異症(古典的FH)の中間に位置することを明らかにしている。また、LDL受容体変異とPCSK9 E32K変異が合併することで臨床像が重症化しFHホモ接合体類似の病態を呈することも明確にしている。文書による同意取得の後、FHが疑われる症例の末梢血を用いHRM法、MPLA法にて既知のLDL受容体変異を同定した。一方、LDL受容体変異を認めない症例に対し、genomic DNAを抽出しPCSK9遺伝子全エクソンに対するプライマーを設定し、直接塩基配列法にて遺伝子変異を決定した。LDL受容体変異による家族性高コレステロール血症を対象にPCSK9遺伝子変異のスクリーニングを行った。現在までに、6例のダブルへテロ接合体を見出しているが、その平均総コレステロール値は416±127mg/dLであった。うち一例は著明な皮膚黄色腫を呈する3歳男児で、一例は著明な全身腱黄色腫を呈する33歳男性であった。総コレステロール値はそれぞれ629mg/dL、520mg/dLと重症であり、FHホモ接合体様であった。一方、もっとも軽症な症例は13歳男性で総コレステロール値はわずか270mg/dLであり、腱・皮膚黄色腫も認めなかった。全例生存中で心血管イベントの発生は認めていない。日本人を対象とした研究でPCSK9 V4Iも高頻度変異と考えられているが、現在のところわれわれのコーホート内では一例も見出されていない。
4: 遅れている
2012年度当初の研究分担者が本学を退職したため当初の予定より遅れている。当初の予定では、新たに見出された遺伝子変異の機能解析をin vitroで行う予定であった。In vivo解析に着手したが、動脈硬化モデルの作成に成功していない。遺伝子導入実験は未だ行われていない。
平成26年度は、本邦で見出されたPCSK9の高頻度変異V4IのスクリーニングをLDL受容体変異症の中で行う。また、本年度成功しなかったゼブラフィッシュを用いた動脈硬化モデル作成を行う。その上でin vivo実験に着手する予定である。
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