研究課題
基盤研究(C)
【目的】心腎連関を呈する慢性心不全症例を対象とした東洋医学的アプローチの安全性と有効性を検討するため,まず防已黄耆湯の利水作用について検討する。【方法】ステージBまたはCの代償期慢性心不全でステージ3以上の慢性腎不全を合併する26例を対象とした。防已黄耆湯を2.5-5.0 g/日で投与開始し,最大7.5 g/日まで増量し,投与後3ヵ月および9ヵ月後の安全性と有効性を臨床的に検討した。【結果】腎機能の指標としてBUN, 血清クレアチニン, 推定糸球体濾過量,また心不全の指標として脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の推移を検討した結果,いずれの指標も投与前後の比較で有意な改善を認めた。【結語】心腎連関を呈する慢性心不全症例において,少数例ではあるが防已黄耆湯の利水作用は心不全および腎機能の両面における有効性が示され,経過中の安全性も確認できた。引き続き多施設共同研究による検証が必要である。
2: おおむね順調に進展している
申請時の研究計画に従って実施された先行研究をまとめ,論文投稿中である。先行研究は単施設における観察研究であったため,症例を重ねて有効性と安全性を検証することを目的に,多施設共同研究の準備を進めている。心腎連関を呈する代償期慢性心不全症例を対象とし,約50例を目標として投与前と投与後の詳細な臨床検査を行い,防已黄耆湯の作用メカニズムの解明を目指している。
心腎連関を呈する慢性心不全症例を対象とし,以下の多施設共同臨床研究を展開する。1.対象:外来通院中の代償期慢性心不全患者(NYHAIII度以下,BNP≧100 pg/mLかつ観察期間中のBNPの変化が100 pg/mL以内に安定)のうち,eGFR60 mL/分/1.73㎡未満の慢性腎臓病を合併する心腎連関を呈する約50例。2.投与方法:防已黄耆湯顆粒1日7.5 g(3包)を2~3回に分割し,食前又は食間に経口投与する。投与量は主治医の判断により5.0 g(2包)から開始することも可能とする。3.試験デザイン:投与前に4-8週の観察期間を設定し,0週(投与前),4週,8週,12週の4点で有効性と安全性の検証と作用メカニズムの解明のために以下の項目を評価する。検体検査と心臓自律神経機能評価は0週と12週の2点で実施する。4.検査・評価項目:心不全の評価:自覚症状,重症度分類;血液生化学:腎機能評価,NT-proBNP,高感度CRP,高感度トロポニンT,TNF-α等のサイトカイン,リンパ球分画(Th1, Th2, T-reg);尿生化学:アルブミン,酸化ストレス(8-OHdG);心臓自律神経機能評価:Holter心電図による24記録中の心拍変動解析,心筋MIBGシンチグラフィー。5.中止基準:防已黄耆湯の影響が否定できない副作用,対象患者の入院,その他主治医による中止の判断。
当初計画で見込んだ購入物品が想定よりも安価に購入でき,また出張予定が次年度に変更となったため,次年度使用額が生じた。次年度以降は臨床検査データの標準化と集約のため,検査項目のうちの保険診療外の特殊検査は外注検査会社(SRL)に測定を委託するためその費用とする。また,当研究室で測定予定の酸化ストレスなどの試薬や測定に用いる備品(ピペットなど)の購入を予定している。さらに研究成果の発表のため学会出張を予定している。
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