研究実績の概要 |
本年度は、1)冠動脈形成術(PCI)に対するNicorandilの腎保護作用の解明のため、PCI施行患者に対する無作為比較試験と、2)CINウサギモデルの開発、を施行した。 1)PCIを施行する患者でcystatin C高値の腎機能低下症例213名をランダムに、生食群(C群)107名とNicorandil群(N群、PCI4時間前からPCI後24時間の持続点滴静注:0.096mg/ml,1ml/kg/hr)106名の2群に分け、前向きに造影剤腎症(CIN)と主要心腎血管イベント(MACRE)の発症頻度を比較した。その結果、両群の患者背景や造影剤の使用量などに有意差はなかった。血漿Crの変化率は有意にC群に比較してN群で小さく、eGFRの低下率も有意に低値であった。PCI後1ヵ月間のMACREの頻度は、有意にC群に比較してN群で低値であった。特にCINの発症頻度もC群に比較してN群で有意に低下した。Nicorandilの持続点滴静注により腎機能低下症例におけるCIN発症頻度を減少させた要因として、現在CINの根本的な病態機序はまだ完全には理解されていないが、CINの腎虚血傷害に対しNicorandilは活性酸素の蓄積を阻害して、ET-1の合成を抑制、NO生産を誘発することで腎保護作用を示す可能性があると考えられた。Nicorandilは、PCI前4時間、PCI後24時間の持続点滴静注により腎機能低下症例におけるCIN発症頻度を減少させることができることが示唆された。この研究成果は、Int J Cardiolに採択予定である。 2)CINウサギモデルの開発 月齢3ヵ月の日本白色ウサギ56匹を用い、低用量群(造影剤イオパミロン370 5mL/Kg)と高用量群(造影剤イオパミロン370 10mL/Kg)の造影剤を静注し、ウサギCINモデルを開発した。
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