研究課題/領域番号 |
24591046
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平敷 安希博 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (10418741)
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研究分担者 |
坂東 泰子 (暮石 泰子) 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60452190)
竹下 享典 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (70444403)
室原 豊明 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90299503)
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キーワード | 心筋症 |
研究概要 |
研究の目的は、拡張型ならびに肥大型心筋症において、予後予測因子である運動耐容能と心筋病理の観点から明らかにすることである。運動耐容能は、心収縮予備能との関連が強いことにより、心筋病理における繊維化、遺伝子発現との関連が推測されるが、これまで運動耐容能を心筋病理の観点より検討した報告は、ほとんど無い。本研究は、運度耐容能と心筋病理との関連を明らかにし、心筋症における運動時心機能の病態解明を目指している。 2013年度は、肥大型心筋症において、高感度トロポニンTとIを末梢血、大動脈血、冠状静脈血から採取・測定し、その値と心筋障害の程度や血行動態、あるいは心筋遺伝子発現Ca2+ハンドリングやミトコンドリア関連蛋白との関連を報告した。また、拡張型心筋症における、心筋遺伝子発現Ca2+ハンドリングやミトコンドリア関連蛋白と、心筋病理による直接的な繊維化の重症度、心臓カテーテル検査による心筋拡張障害ならびに心臓MRIのdelayed enhancementとの関連を報告した。また、左心不全の予後は右心機能に左右される報告が近年見られることより、右心系評価にも注目し、肺高血圧症(平均肺動脈圧25mmHg以上)を合併した拡張型心筋症がそうでないものと比較し、予後との密接な関連を報告した。肺高血圧症は、心臓死の予測因子として独立した指標であった。運動耐容能の側面から、心肺運動負荷試験を用いて、肺高血圧症におけるボセンタンの治療効果判定の有用性を示し、肺血栓塞栓性肺高血圧症に対してもボセンタンにより、換気効率を改善させ、Peak時のPETCO2をボセンタン前と比較し有意に改善したことを報告した。現在、再投稿中であるが、心臓MRIによる繊維化の有無と運動耐容能による評価の組み合わせは、予後予測に有用であることを報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の成果としては、概ね順調に進展していると考える。上記の成果に加え、近日中に現在再投稿中の論文が報告されることも予定している。上記以外にも運動耐容能の評価による、論文発表にも至った。疾患としては、心筋症のみならず、左心不全、右心不全に対する心機能評価、左室-右室の連関についても注目して成果が上がっている。症例数も予想範囲内でコンスタントに増加している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、私は、肺高血圧先端医療学寄附講座に籍を移し、肺高血圧症という右室に対する後負荷疾患の症例が大幅に増加している。心機能、血行動態に関する評価方法としては、新たに右室に対するperformanceや肺動脈圧への介入・評価を加えて今後の研究の推進方策にしたいと考えている。予後の追跡調査は引き続き行い、予後予測因子の探索は継続する必要がある。肺高血圧症に関しては、心筋生検は倫理的にも難しい側面があり、左心系の心筋疾患にのみ行っていくに限られる。
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次年度の研究費の使用計画 |
血液測定、蛋白測定などの試薬の使用が予定よりも少なく、海外学会への発表は1回にとどまり、論文掲載などの発表費用も想定したより低額であったため、未使用額が生じた。 海外学会への発表や、論文掲載予定もあり、発表費用が生じる。引き続き拡張型心筋症、肥大型心筋症症例を蓄積し、血行動態指標、血液バイオマーカー、心臓MRI、心エコーによる画像解析、心肺運動負荷試験による運動耐容能評価などの評価を継続的に行い、その後、エビデンスに基づいた治療の継続により、予後追跡調査を行う。
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