研究課題/領域番号 |
24591048
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西尾 亮介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00335275)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心不全 / 心筋症 / 心筋梗塞 / リンパ管 / 心機能 / 免疫 / マイクロマシン |
研究概要 |
我々は拡張型心筋症および心筋梗塞モデルマウスにおいて、リンパ管を特異的に同定する抗VEGF-R3抗体および抗Podoplanin抗体により、心臓リンパ管の存在を明らかとしてきた。そして、これらのモデルマウスを用い、これらの病態における心臓リンパ管新生調整因子の関与をさらに詳細に解析してきた。今回,我々は独自の方法により心機能との関連をさらに詳細に検討した。我々は経冠動脈的にアデノウイルスベクターを心臓へ導入するためのマイクロバルーンを開発し、リンパ管新生インデューサーであるVEGF-C156S及びリンパ管新生ブロッカーであるVEGFR3-Fcの治療効果につきさらに検討し,臨床応用可能な心臓リンパ管新生調整因子による治療法をマウスモデルにおいて確立し,今回,臨床応用に向け,これらの治療法をより発展させてきた. VEGFR-3ノックアウトマウスは心外膜液貯留等のため胎生9.5日で致死となることからも、心臓リンパ管は心疾患の治療ターゲットとなることが示唆されてきた。治療への応用の観点から、用いるタンパク、遺伝子、成長因子等の性質を考慮すると、少なくともモニタリングとデリバリーの機能を備えた治療用マイクロデバイスによる心内膜または心外膜直下からのアプローチが不可欠と考えられる。同時に、経血管的・経リンパ管的アプローチが不可欠なため、微小管腔用マイクロデバイスの開発も視野に入れる。そこで、今回,治療用マイクロデバイス開発を視野に入れた動物実験も行うことを検討した。我々は心筋細胞の配列を制御する方法を開発しており、この技術を用い、リンパ管新生インデューサー、VEGF-C156S及びリンパ管新生ブロッカー、VEGFR3-Fcの治療戦略への応用も検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は拡張型心筋症および心筋梗塞モデルマウスにおいて、これらの病態における心臓リンパ管新生調整因子の関与をさらに詳細に解析してきた。今回,我々は独自の方法により心機能との関連をさらに詳細に検討したが,予定以上に検討に時間を要した.また,リンパ管新生インデューサーであるVEGF-C156S及びリンパ管新生ブロッカーであるVEGFR3-Fcの治療効果につきさらに検討したが,臨床応用への実験段階で,予定以上に時間を要した. 治療への応用の観点から、モニタリングとデリバリーの機能を備えた治療用マイクロデバイスによる心内膜または心外膜直下からのアプローチが不可欠と考えられ,微小管腔用マイクロデバイスの開発も視野に入れた。そこで、治療用マイクロデバイス開発を視野に入れた動物実験も行うことを検討したが,予定以上に時間を要した。 治療用マイクロデバイスには以下に述べるマイクロデバイスを統合したものとなることが予想される。すなわち、マイクロ圧センサー、マイクロサーミスターを応用した微小流量計、血管内マイクロスコープ、マイクロスコープ付マイクロバイオトーム、エレクトロポレーション法による遺伝子導入用マイクロデバイス、および超音波法による遺伝子導入用マイクロデバイス、リアルタイムマイクロプロテインアナライザー等である。心疾患における微小循環の病態は不明な点が多い。リンパ管・微小血管を対象としたマイクロデバイスによりリンパ管を含めた微小循環の測定および解析と微小領域における蛋白や遺伝子発現の測定が可能となるが,開発に予想以上に時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
拡張型心筋症および心筋梗塞モデルマウスの病態における心臓リンパ管の役割が明らかとなってきたが,治療への応用へはその詳細な検討が不可欠である.これらの病態における心臓リンパ管新生調整因子の関与をさらに詳細に解析すると同時に,臨床応用に向け,治療法をより発展させる. 治療への応用の観点から、モニタリングとデリバリーの機能を備えた治療用マイクロデバイスによる心内膜または心外膜直下からのアプローチが不可欠であり、微小管腔用マイクロデバイスの開発も視野に入れ,治療用マイクロデバイス開発を視野に入れた動物実験をより詳細に行う. 治療用マイクロデバイスの開発のプロセスは、(1)治療用マイクロデバイスの設計;(2)外部製造メーカーでの試作品の作成;(3)マウスを使った生体内実験(4)特許申請、といったものとなる。 マイクロデバイス開発に当たっては実用化を考慮し、可能な限り早期に開始することが望まれる。医療用マイクロデバイスの実用化には、ノウハウの蓄積が不可欠であり、総合的にマイクロテクノロジーを開発することが必要条件となる。 治療用マイクロデバイスの開発は診断・治療の両面において低侵襲的であり、医療コストおよび患者本位の医療という両面から今後の医療に不可欠であり、日本の医療の向かうべき方向に合致しているとも考えられる。医療の発展には不可欠であり、研究のための研究ではなく、臨床での治療・診断で用いられることを前提としする。また、新たな医療用ハードの開発には莫大な投資が必要となり、かつ実用化不可能となるリスクも存在する。当研究においては可能な限り現在使用されている測定・治療機器を応用、マイクロ化し、低コストで短期間に臨床実用化する事を目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスにおける新規治療法の開発に時間を要したが,次年度では治療用マイクロデバイスの開発もより推進する.(1)治療用マイクロデバイスの設計:マウス心臓カテーテルの技術を応用し、設計を行う;(2)外部製造メーカーでの試作品の作成;医療用機器製造メーカー等にて試作品を作成する;(3)マウスを使った生体内実験:マウスの心臓を用い、生体にて試作品の実用化へ向けての実験を行う;(4)特許申請:マウスを使った実験で特許化が可能な部分につき特許申請を行う、といったプロセスを予定している. マイクロデバイス開発に当たっては実用化を考慮し、可能な限り早期に開始することが望まれる。医療用マイクロデバイスの実用化には、ノウハウの蓄積が不可欠であり、総合的にマイクロテクノロジーを開発することが必要条件となる。我々はマイクロテクノロジーを用い、マウスの心臓移植、心筋梗塞のモデルを作成し、経血管的に体重17gの心不全モデルマウスの心機能の評価を行うことに成功している。マウスにおける安定した血行動態解析技術を持っている機関は当研究機関のみであり,その技術を基礎に開発を促進する. 治療用マイクロデバイスには以下に述べるマイクロデバイスを統合したものとなることが予想される。すなわち、マイクロ圧センサー、マイクロサーミスターを応用した微小流量計、血管内マイクロスコープ、マイクロスコープ付マイクロバイオトーム、エレクトロポレーション法による遺伝子導入用マイクロデバイス、および超音波法による遺伝子導入用マイクロデバイス、リアルタイムマイクロプロテインアナライザー等である。また,マイクロテクノロジーをサポートする周辺医療器材の開発も重要と思われ、微小血管用切開、縫合器具、マイクロクリップ、微小人工血管、マイクロインフュージョンポンプ、超微細チューブ等の開発も視野に入れる。
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