我々は拡張型心筋症および心筋梗塞モデルマウスにおいて、リンパ管を特異的に同定する抗VEGF-R3抗体および抗Podoplanin抗体によ り、心臓リンパ管の存在を明らかとしてきた。そして、これらのモデルマウスを用い、これらの病態における心臓リンパ管新生調整因 子の関与をさらに詳細に解析してきた。今回,我々は独自の方法により心機能との関連をさらに詳細に検討した。我々は経冠動脈的に アデノウイルスベクターを心臓へ導入するためのマイクロバルーンを開発し、リンパ管新生インデューサーであるVEGF-C156S及びリン パ管新生ブロッカーであるVEGFR3-Fcの治療効果につきさらに検討し,臨床応用可能な心臓リンパ管新生調整因子による治療法をマウ スモデルにおいて確立し,今回,臨床応用に向け,これらの治療法をより発展させてきた. VEGFR-3ノックアウトマウスは心外膜液貯留等のため胎生9.5日で致死となることからも、心臓リンパ管は心疾患の治療ターゲットと なることが示唆されてきた。治療への応用の観点から、用いるタンパク、遺伝子、成長因子等の性質を考慮すると、少なくともモニタ リングとデリバリーの機能を備えた治療用マイクロデバイスによる心内膜または心外膜直下からのアプローチが不可欠と考えられる。 同時に、経血管的・経リンパ管的アプローチが不可欠なため、微小管腔用マイクロデバイスの開発も視野に入れる。そこで、今回,治 療用マイクロデバイス開発を視野に入れた動物実験も行うことを検討した。我々は心筋細胞の配列を制御する方法を開発しており、こ の技術を用い、リンパ管新生インデューサー、VEGF-C156S及びリンパ管新生ブロッカー、VEGFR3-Fcの治療戦略への応用も検討した。
|