研究課題
本研究は、心不全患者の40%を占める左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)も左室駆出率が低下して心不全同様予後不良である。HFpEFに有効な治療法は現在のところなく、また治療の前提と して必須である診断基準も定まっていない。本研究は心不全患者の40%を占め、左室駆出率が低下した心不全と同様に予後不良である左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)に対し、HFpEFモデルである ダール食塩感受性 ラットに対しメタボローム解析を行った結果によって得られたカルニチンの病態への関与、治 療・診断への応用を研究するものである。本年度は、動物モデルを用いて、カルニチンが心不全で低下しているのか、そのメカニズムについて、腎機能との関連から考察を行なった。ダール食塩感受性ラットと抵抗性ラットの通常食投与群/高食塩食投与群における経時的検体(7週齢、13週齢、19週齢)を用いて、血漿・尿中carnitine分画の経時的変化を測定した。血中total/ free / acyl-carnitineは、7~13週齢では感受性>抵抗性であり、19週齢において感受性<抵抗性となった。尿中total/ free / acyl-carnitineは、7~19週齢すべての時点において感受性>抵抗性であり、ヒトHFpEF vs 正常例とは逆の結果になった。ラットにおいても、carnitineが食塩感受性and/or HFpEFの病態に関与している可能性がある。ヒトとラットのcarnitine濃度の違いに関しては、観察している時期の違い(ヒトは慢性期、ラットは急性期)や加療の有無(ヒトは利尿剤・降圧剤など導入後、ラットは無治療)などが関与している可能性がある。以上より、現在継続している臨床観察研究については、その測定時期、病態などを慎重に判断する必要があると考えられた。
3: やや遅れている
臨床の症例が、十分に集積しておらず解析が遅れている。今後症例を増やし、交絡因子との関連を明確にしたい。
現在、症例を網羅的に集積する方法を確立している。具体的には、入院時の心不全症例に包括的な承諾書を取得する体制を整えた。以上の方法を用いれば、さまざまなタイプの症例について解析することが可能になる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Am J Cardiol
巻: 113 ページ: 552-558
Circ J
巻: 78 ページ: 322-328