研究課題
高比重リポ蛋白(HDL)は多面的な抗動脈硬化作用を有するが、抗動脈硬化作用が減弱したHDL(dysfunctional HDL)が生成されることが報告されている。 血管内皮リパーゼ(EL)はHDL粒子中のリン脂質を分解することによりHDL代謝を促進している。しかし、dysfunctional HDLの簡便な評価方法や冠動脈疾患における意義、ELのHDL機能に対する効果は不明である。本研究では、ヒト血清におけるdysfunctional HDLの診断法とELの影響と動脈硬化の成因における役割を明らかにすることを目指した。本年度の成果を以下に示す。1. HDLの抗動脈硬化作用の評価方法として、従来は、患者から採取したHDL分画と、放射性標識したコレステロールを取り込ませた培養マクロファージとを共培養し、HDLに取り込まれたコレステロール量を測定することによりHDLのコレステロール引抜き能を評価していた。今回、我々は放射性同位元素や培養細胞を用いず、簡便にHDLのコレステロール取込み能を評価する方法を開発した。96穴プレート上に固相化したアポ A1抗体により患者由来HDL粒子を捕捉した後、蛍光標識コレステロールと共培養し、HDLに取り込まれたコレステロール量の蛍光強度を測定することによりHDLのコレステロール取込み能を評価していた。2. 上記方法を用いて、冠動脈疾患患者におけるHDLのコレステロール取込み能を評価したところ、カテーテル治療後の冠動脈疾患イベントが再発した患者では、再発のない患者にくらべて有意にHDLのコレステロール取込み能が低下していた。一方、急性冠症候群や重症冠動脈疾患患者では、血中EL濃度が上昇しており、高感度CRPと相関していた。以上より、ELはHDL-C濃度のみならずHDL機能を修飾し、dysfunctional HDL量の成因に関与することが示唆された。
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