研究課題
QRS解析システムのソフトウェアを使用し、分裂性QRS(fQRS)の意義について、様々な症例で検討している。fQRS波形は心室筋興奮の進行が線維化や心筋障害によって様々な方向に変化していることを示すと考えられ、解析ソフトによりfQRS検出感度を高め、各種心筋疾患での予後推定などに応用が可能である。平成25年度は、元々データベースが十分に構築されているBrugada症候群で検討した。Brugada症候群患者246例で無症候例を含めても、fQRS解析が予後予測に有用であることが判明した。fQRS以外にも、PQ延長、QRS延長、早期再分極、QT延長が単変量解析で心室細動発生の予測因子であった。多変量解析ではこれらの指標のうち、早期再分極、fQRSが独立した予後予測因子となることが判明し、それぞれオッズ比が2.9、5.2で、fQRSは心電図指標として高い予後予測率を示した。さらにfQRSと再分極を組み合わせることで、いずれの異常も見られる場合、予後不良の強い予測因子となった。この結果は学会報告、論文報告(in press)を行っている。サルコイドーシスは主に呼吸器病変(両肺門部リンパ節腫脹)で見つかることが多いが、心筋病変がその予後を規定する。心サルコイドーシスは心室内に肉芽腫性病変を形成し、炎症が消退した後に線維化病変を形成し、心不全、房室ブロック、心室頻拍などを発生する。サルコイドーシス患者121例でfQRSを検討したところ、心室頻拍を来した患者では左室側壁誘導及び前壁誘導でのfQRS陽性率が高率であった(心室頻拍例でのfQRS検出率:側壁 60%、前壁68%。非心室頻拍例:側壁 22%、前壁30%、p<0.01)。多変量解析でも側壁及び前壁のfQRS検出は独立した危険因子であった(オッズ比 側壁 3.12、前壁 3.53)。この結果を国内外の学会報告しており、現在論文作成中である。またその他の疾患にも応用しており、今後学会報告、論文発表を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
H25年度は当研究2年目であり、概要に述べたように学会発表、論文作成を進めている。3年目にかけて、症例を蓄積し、データベースを拡充して、fQRS解析を様々な心疾患に応用し、不整脈・心不全発生などのイベントや予後予測因子となるかどうかを検討する予定である。
最終年度はfQRS解析を心筋梗塞後、狭心症、各種心筋症などに応用し、心事故発生との関連、心機能との関連、予後予測因子としての有用性を検討する。様々な疾患に応用したデータを、国内外の学会発表及び論文作成を進める。現在は当大学病院の症例のみでの検討であるが、当該助成事業終了後も、今回開発したfQRS解析ソフトを用いた多施設共同研究を推進し、多数例での有用性を検討し、新たなエビデンス発信を行っていく。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件) 図書 (3件)
J Am CollCardiol
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.jacc.2014.01.072.
Heart Rhythm.
巻: 11 ページ: 314-317
10.1186/1475-2840-13-61.
Intern Med.
巻: 53(7) ページ: 725-728
org/10.2169/internalmedicine.53.1147.
レジデント
巻: 7 ページ: 91-100
巻: 10 ページ: 1161-1168
10.1016/j.hrthm.2013.04.009.
J Arrhythmia.
巻: 29 ページ: 100-109
10.1016/j.joa.2012.12.008
巻: 10 ページ: 738-739
10.1016/j.hrthm.2013.01.026.
最新医学
巻: 68 ページ: 1579-1587
救急・集中治療
巻: 25 ページ: 595-601