平成26年度は、アストロサイトにアンジオテンシンII受容体を発現できないようにCre-LoxPシステムを用いて作成したマウスに心筋梗塞誘発性慢性心不全を作成し、コントロール群に比し劇的な心不全予後改善を得られ、Am J Physiolに論文が採択・掲載された。 本研究の目標として掲げた「慢性心不全モデルラットに対する脳延髄交感神経活動中枢へのアストロサイト自家移植の心不全・交感神経活動・生命予後改善への効果を検討」および「改変アストロサイト移植を用いたアポトーシスの原因・心不全への効果の機序解明」は、平成24年度に脳延髄交感神経中枢の神経細胞ではなくアストロサイトがアポトーシスにより減少することを示し、自家神経幹細胞から選択的分化培養による自家アストロサイト作成も行った。平成25年度には、実際に冠動脈結紮による心筋梗塞心不全モデルラットの脳延髄交感神経中枢に自家アストロサイトを注入し、交感神経の大幅な低下と生命予後の改善を認めた。「脳スライス標本を用いた脳延髄交感神経中枢の神経活動に対するアストロサイトの影響」については、安定した電位の記録ができず、アストロサイト自体の電気活動が静的である可能性があり、十分な結果をえるには至らなかった。 3年間の本研究により、従来は明確ではなかった慢性心不全における脳内異常の首座が神経細胞ではなくアスロトサイト、さらにはアストロサイトのアンジオテンシンII受容体が重要である可能性が示された。
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