研究課題/領域番号 |
24591059
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西坂 麻里(小西麻里) 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00448424)
|
研究分担者 |
安藤 眞一 九州大学, 大学病院, 特任教授 (90575284)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 睡眠時無呼吸 / 血管内皮機能 / 高血圧 / 心不全 / 不整脈 / 水分貯留 / 治療学 / 国際情報交換 |
研究概要 |
1.プロトコールの確立:健常人3名及び閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者ボランティア4名において、本研究で用いる歯科用口唇筋力増強装置M-パタカラ(㈱パタカラ)トレーニングプロトコールの検討を行った。患者ボランティアのうち2名はCPAP使用中患者で、2名共12週間継続はできたがトレーニング回数、時間はまちまちであり、一定した継続は叶わなかった。他2名はパタカラ単独使用で毎日3分×4回以上のトレーニングを継続され、主観的な症状の改善を確認した。1名においては簡易PSG検査にて、RDI 18.5(前)から9.9(後)へと著しい改善を確認できた。 以上の結果が8週前後から確認できたため、治療介入期間を当初予定の6カ月から12週間に変更した。また、実施可能と判断した1回3分×1日3回以上を標準プロトコールと設定した。また、CPAPなど必要な標準治療を妨げることのないよう、対象患者を比較的軽症者(PSGにて30≧AHI>5)とした。 2.患者での研究実施:上記のプロトコールでOSAS患者対象口輪筋トレーニングの実施に対し倫理委員会の承認を得た。統計学者との検討及び本施設の患者重症度分布を考慮し予定登録数40名と設定、2012年11月より患者登録開始、初回トレーニングを11月に開始した。2013年4月10日時点で、7名の同意を得て研究介入開始、うち 2名脱落(脱落率29%), 2名が12週間の治療プロトコール完了にて介入後評価まで終了している。有害事象の報告はなく、脱落例はいずれも1日3回以上のトレーニング維持困難が脱落理由であった。PSG結果含め、介入前後の比較など、現在解析を開始した。 以上、交付申請書に記載した「研究の目的」を果たすべく「研究実施計画」に挙げた初年度計画を概ね達成した。健常者のみならず患者の協力を得たことで、より適切なプロトコール設定が可能となったと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は覚醒中の簡便で非侵襲的な口輪筋トレーニングによるOSA の治療確立と、それによる心血管予後の改善を検討することである。 OSA治療の主流である持続陽圧呼吸(CPAP)や口腔内装置治療(OA)は有用だが睡眠中装着による不快感のためかえって睡眠の質を損なうことも多く、またCPAP 継続は治療費も嵩むため、受け入れと持続は容易でない。就眠中に不快でない、安価かつ施行が容易な治療が求められている。その一選択肢となりうる治療の確立を目指し、我々は歯科領域で有効性と安全性が確認されてきたデバイス、パタカラを用いた日中のトレーニングのOSA治療としての有用性を検討している。OSA改善効果を主観的かつ客観的に評価すること、更にはOSAによって惹起される心血管予後改善効果の検討を計画している。 初年度を終えた現時点で、先述の如く7名の患者でトレーニングを開始している。現状での脱落率は29%であり、CPAPやOA(50-75%と報告)に比し、継続しやすい治療である可能性を示唆するものである。効果については現在解析過程であるが、少なくとも完了した2名では主観的症状の改善、PSG解析まで終了した1名においては治療前Full PSGでのAHI 24.0・最低SpO2 81%、後AHI 12.2・最低SpO2 89.0%、心血管予後のサロゲイトマーカーである血管内皮機能検査でもFMD7% →トレーニング後8.4%と改善、採血にても高感度CRP 0.06→0.04mg/dL, 脳性ナトリウム利尿ペプチド16.3→8.8㎎/dLといずれも改善を確認している。 予定登録数は40名と設定しており、登録開始4か月で7名の現状のペースであれば、研究期間内に十分達成可能と判断される。以上、3年間の研究期間と現状での達成状況、結果から、計画通りの研究進捗状況であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間の初年度を終了し、口輪筋トレーニングプロトコールの確立の上、OSA患者の登録、実施を開始した。 今後は予定通り、予定登録数40名を達成すべく患者登録の継続、短期効果の判定を行ってゆく。また、12週間の治療期間終了後も経過追跡を行い、トレーニング継続状況と効果の持続など、長期効果の判定を行ってゆく。並行して、統計学的解析も開始する。 また、海外研究協力者の施設での研究拡大、他人種間比較を計画している。25年度中に他施設での倫理委員会承認など準備を整え、26年度の患者登録の開始を目標としたい。 短期効果については、25年度末までには、学会発表が可能となると推測している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今後研究を継続し、より多数のデータを集積するにあたって、必須装置であるパタカラの追加購入とともに、測定に使用する薬品やデータ記録・解析用の媒体などの設備、消耗品の購入が必要となる。 また、今年度は、国内外で行われる学会において研究の成果を報告することを予定しており、海外研究協力者の施設での情報収集とともに、旅費・通信費が多く必要となることが予測されるため、繰越金とともに研究費を使用させていただく予定としている。
|