研究課題/領域番号 |
24591062
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
海北 幸一 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (30346978)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 急性心筋梗塞 / 経皮的冠動脈インターベンション / CYP2C19遺伝子多型 / クロピドグレル |
研究概要 |
本研究では、緊急心臓カテーテル検査に伴い冠動脈インターベンション(PCI)を施行する急性心筋梗塞患者において、クロピドグレルの初期投与時にCYP2C19遺伝子多型を簡便に検出できる簡易測定器(Spartan RX CYP2C19 DNA testing system)を用い、約1時間以内にCYP2C19機能喪失遺伝子の有無を同定し、抗血小板剤の選択とその投与量を検討することで,その後の心血管イベントリスクを回避した、有効な抗血小板療法を確立することが目的であった。今回の検討では、アスピリン、クロピドグレルの抗血小板剤併用療法施行中のCYP2C19機能喪失遺伝子保有者を、無作為にシロスタゾール投与群、非投与群の2群に割り振ることとした。現在、倫理委員会の承認が得られている状態である。購入したSpartan RXの測定精度について検討中であるが、ヒトの口腔粘膜から採取した組織により、CYP2C19*2, *3, *17遺伝子多型は正確に測定できることが判明した。また、血小板凝集能、血小板粘着能、血漿VWF抗原濃度、血漿ADAMTS13抗原濃度、C40 ligand、soluble P- Selectin、IL-6、VASP 等の血小板関連マーカー、CK-MB、高感度 Troponin T等の心筋傷害マーカーおよび高感度CRP等の経時変動を測定する予定であるが、現在、ELISA等の測定手技の確認作業を行っており、各マーカー共に安定して測定できることが判明した。今後は、ST上昇型心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞患者を組み入れ、上記項目を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
製造発売メーカーによるCYP2C19遺伝子多型を簡便に検出できる簡易測定器(Spartan RX CYP2C19 DNA testing system)の納入時期が数ヶ月以上遅れたことにより、平成24年度初めからの研究開始が遅れたことが研究の進行がやや遅れている理由である。現在、本邦では、SpartanRXの保有は当施設のみであるが、問題なく迅速に遺伝子多型が測定できることが判明した。また、血小板凝集能、血小板粘着能、血漿VWF抗原濃度、血漿ADAMTS13抗原濃度、C40 ligand、soluble P- Selectin、IL-6、VASP 等の血小板関連マーカー、CK-MB、高感度 Troponin T等の心筋傷害マーカーおよび高感度CRP等の測定も安定して施行できることが判明した。今後症例を追加して、急性心筋梗塞急性期における、心血管イベントリスクを回避できる有効な抗血小板療法について研究する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.急性心筋梗塞例の登録:積極的なスクリーニングを実施し、適合症例の獲得に努力する。当施設のみでの症例獲得が困難な場合は、他施設に症例登録を依頼する必要があり、数施設への依頼も考慮する。 2.症例がエントリーできた際に、経時的に確実に血液を採取し、処理し、ストックする。欠損データがないように配慮し、後の血小板マーカー等の血中濃度測定や、統計解析が着実に遂行できるよう配慮する。 3.血小板凝集能、血小板粘着能、血小板関連マーカーや、心筋傷害マーカーの血中濃度を測定手技の確立。 4.CYP2C19遺伝子多型と、各種血小板関連マーカー、心筋傷害マーカーと患者背景との関連性について統計学的手法を用いて解析する。患者背景については、入院時の身体所見、採血データ、服薬状況より冠危険因子を抽出することによって検討後、各種血小板関連マーカーや心筋傷害マーカーとの関連性を解析する。 5.急性心筋梗塞患者におけるCYP2C19遺伝子多型と血栓性合併症を含めた予後との関連:本研究に登録された患者は、可能な限り長期に血栓性合併症を含めた心血管イベントに対する予後調査を実施する予定であるが、退院後も当科を定期的に受診して頂き、外来受診時に血栓性イベントについて確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.症例登録の継続:平成24年度に引き続き、急性心筋梗塞例をエントリーし、目標数を達成するよう積極的なスクリーニングを実施する。また、エントリーできた症例の血液サンプルを用い、前年度に引き続き、血小板凝集能、血小板粘着能、血小板関連マーカーや、心筋傷害マーカーの血中濃度を測定し、CYP2C19機能喪失遺伝子の有無によって選択した治療法の効果を比較検討する。 2.各種血小板関連マーカー、心筋傷害マーカーと患者背景との関連:経時採血により得られた血液サンプルから、各種血小板関連マーカーや心筋傷害マーカーの推移とCYP2C19遺伝子多型を含めた患者背景との間の関連性について統計学的手法を用いて解析する。患者背景については、入院時の身体所見、採血データ、服薬状況より冠危険因子を抽出することによって検討後、各種血小板関連マーカーや心筋傷害マーカーとの関連性を解析する。 3.急性冠症候群患者におけるCYP2C19遺伝子多型と血栓性合併症を含めた予後との関連:本研究に登録された患者は、可能な限り長期(少なくともクロピドグレル内服期間中)に血栓性合併症を含めた心血管イベントに対する予後調査を実施する予定である。この予後調査により、CYP2C19機能喪失遺伝子の有無における血小板関連マーカー、心筋傷害マーカーの変動と、血栓性合併症、心血管イベントのリスクとを解析することができる。
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