研究課題/領域番号 |
24591064
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
中里 和彦 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (90363762)
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研究分担者 |
竹石 恭知 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40272067)
國井 浩行 福島県立医科大学, 医学部, 学内講師 (20443856)
坂本 信雄 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80448638)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 急性冠症候群 / 早期診断 / バイオマーカー / 不安定プラーク |
研究概要 |
急性冠症候群(急性心筋梗塞および不安定狭心症)の早期診断に向けた病態解明のために、緊急冠動脈造影検査時に血液サンプルを取得する。対象は福島県立医科大学附属病院で急性冠症候群と診断され、緊急冠動脈造影検査を受ける症例のうち、本研究に関する同意を得られた症例で、大動脈および冠静脈洞からの採血を実施している。急性冠症候群の定義や冠動脈造影の適応については日本循環器学会の「急性冠症候群の診療に関するガイドライン2007年改訂版」に従っている。急性冠症候群に特徴的なバイオマーカーを特定するためには対照群が必要であるが、その対象疾患として、労作性(安定)狭心症を設定した。それは当院で労作性狭心症を疑われ、同意の上で待機的冠動脈造影検査を受ける症例とした。両群ともに冠動脈造影検査および研究用採血に同意が得られなかった症例は除外した。 これまでのところ、急性冠症候群のサンプルが約30例、対象としての安定狭心症群が約30例集められた。血液サンプルは心臓カテーテル検査・治療の際に経カテーテル的に上行大動脈と冠静脈洞から採取し、血漿分離用および血清分離用の試験管にて遠心分離機で血漿および血清成分を分離している。各患者の臨床データ(病歴、 各種検査成績、予後を含む経過、治療内容、服薬内容等)は、順次データベースに登録している。得られた血漿および血清は、滅菌されたマイクロチュ ーブに分注し、今後のバイオマーカー測定まで-20°Cの冷凍庫に保存している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画手順に従い対象患者からの血液サンプルの収集、血漿および血清の分離、冷凍保存を行っている。また、付随する臨床データの記録も、データベースを構築して集積中である。血液サンプルの収集数は当初の想定よりやや遅れている。その理由として、急性冠症候群の発生は日時を予想できるものではないため、休日や深夜での治療もあり得る。そのため、人手が足りない場合に患者や家族へ同意取得のための充分な説明時間が取れなかったり、患者への治療を優先させるために検体処理に人手が割けなかったりすることなどが挙げられる。今後も人命最優先で治療にあたりつつ、より多くの血液サンプルが収集保存できるようにする方針である。
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今後の研究の推進方策 |
ストックされたサンプルが一定数に達したら、検討すべき物質の濃度を信頼性の高い測定計を用いて測定する。スクリーニング候補の一つであるpentraxin3を例にあげると、ELISA法によるヒトPentraxin3測定キット(Human Pentraxin3/TSG-14 ELISA System, 株式会社ペルセウス プロテオミクス)を用いて PTX3濃度を測定する。また、従来から用いられている高感度トロポニンTや高感度CRPも同時に測定し、それらとの類似点や相違点についても検討する。また、(1)冠静 脈洞から採血したサンプルと(2)大動脈から採血したサンプルでそれぞれに測定し、 (1)と(2)の差を求めること によって、対象物質が本当に心臓の血管床から放出されているのかどうかを検証する。さらに冠動脈血栓/プラーク吸引療法を実施した場合には、吸引された検体で免疫組織染色(例えば抗PTX3抗体や抗neopterin抗体を用いて)を行うことにより、実際の病変組織でのバイオマーカーの発現を検討することも計画している。これらのデータと患者の臨床指標(各種検査値、心筋梗塞サイズ、合併症、心機能、危険因子など)を比較し、急性冠症候群の診断やリスク層別化にどのように役立つかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1) 血液サンプルから血漿、血清分離および冷凍保存のための遠心チューブ、ピペット、マイクロチューブ、冷凍庫用保存ケースなどの消耗品の購入。 2) バイオマーカー測定キットの購入。(PTX3、neopterin、MPOなどの分子マーカー測定キットを計画している)
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