研究概要 |
近年、心房細動に対して肺静脈を左心房から電気的に隔離するカテーテルアブレーションが普及してきているが、それのみによる根治率は決して高いとは言えない。その背景の1つとして高血圧、糖尿病など合併する基礎疾患により自律神経の関与を含めた不整脈基質が異なることが考えられる。本研究においては疾患毎の治療戦略を構築することを目的とし、孤立性、高血圧、心筋症の3群に分類し、臨床的背景、アブレーション中の電気生理学的所見を比較検討した。 臨床的背景としては発症様式、BNP含めた各種採血、心エコーやCTによる心形態を評価した。孤立性では迷走神経ならびに交感神経依存型が57%であったが、高血圧、心筋症では72%において発症様式が分類不能であった。また、孤立性、高血圧、心筋症の順に左房心筋のリモデリングは進行し、BNP、CRPも高値となった。 アブレーション中の検討では、肺静脈隔離術前後において、冠静脈洞(CS)及び右房(RA)における心房細動中の細動興奮周期を測定した。術前の平均興奮周期は心筋症(CS: 7.07±0.28 Hz, RA: 6.98±0.44 Hz)において孤立性(CS: 6.03±0.22 Hz, RA: 6.05±0.48 Hz)、高血圧(CS: 6.15±0.43 Hz, RA: 5.81±0.48 Hz)に比較し高値(P<0.05)であった。さらに孤立性ならびに高血圧においては持続時間から発作性、持続性に分類し検討したところ、持続性(CS: 6.64±0.34 Hz, RA: 7.13±0.21 Hz)は発作性(CS: 5.84±0.37 Hz, RA: 5.40±0.20 Hz)に比較し高値(P<0.05)であった。高血圧性心疾患の不整脈基質形成においては、疾患よりも持続時間の影響が大きい事が示唆された。術後の評価は心房細動が誘発されないことも多く、十分に行えなかった。
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