臨床研究として、血清可溶型LR11(sLR11)濃度が未治療患者において肺動脈性肺高血圧患者において上昇していること、sLR11濃度と平均肺動脈圧、肺血管抵抗に相関があることを見出し、sLR11が血管平滑筋細胞増殖及び血管リモデリングの指標になる、早期診断としてのバイオマーカーになる可能性を見出した。また、多施設研究では、横断研究であるが、肺高血圧治療薬投与特にPGI2静注でsLR11濃度が低い傾向があり、治療のバイオマーカーになる可能性を示した。また慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者と比較し、肺動脈性肺高血圧症患者では、sLR11濃度が上昇していた。慢性塞栓性肺高血圧症患者では、器質化血栓が肺動脈に生じ肺血管抵抗が上昇することにより肺動脈圧が上昇することが、血管平滑筋細胞増殖が、肺動脈性肺高血圧患者と比較し、少ない可能性を示した。 基礎研究では、LR11欠損マウスを用い、低酸素惹起性肺高血圧発症の抑制を証明した。またそのメカニズムとしてHIF-1αがLR11のプロモーター領域にbinding siteを持つことよりHIF-1αの関与が考えれられ、In vitroでは、PAVSMCsを1%低酸素下培養したところ48時間をピークにLR11蛋白発現の上昇を観察した。PAHにおいても血管平滑筋細胞増殖にLR11とHIF-1αが重要な役割を持つ可能性に注目し、低酸素負荷でのLR11発現調節、さらに、中和抗体を作成し、新たなる治療薬を確立する。
|