研究実績の概要 |
PTX3を敗血症マウスに腹腔内注入することによってコントロールと比較し明らかに生存期間を延ばすことができた。メカニズムは比較的少量のヒストンによる傷害は、血中に存在する生理的阻害物質であるアルブミンやプロテインC, PTX3によって相当程度阻害される。しかし、ヒストン濃度が高くなると、生理的阻害物質では不十分であり、治療的介入の必要があると考えられた。ヒストンH3 (25μg/mL; 敗血症においてみられる程度の濃度として設定)による血管内皮細胞(ラット大動脈由来内皮細胞)障害は、1) 血清フリー(Opti-MEM)では強く見られたが、100%血清でほぼ完全に緩和された。2) 0%アルブミン培養液では、強い内皮細胞障害が見られたが、5%アルブミン(生理的濃度)により高度に緩和された。また2.5%アルブミンでも相当程度緩和され、1%アルブミンによる緩和効果は少なかった。3) 生理的濃度の活性化プロテインC (APC, 4.0μg/mL)でも緩和効果がみられたが、治療的濃度(40μg/mL)でより強い緩和効果がみられた。4) 炎症時の反応としてみられる程度のPTX3濃度(0.1μg/mL)でも緩和効果がみられたが、治療的濃度(1.0μg/mL)でより強い緩和効果がみられた。そこでPTX3特異的抗体と吸着カラムへの接合を試みたが、非特異的結合によるノイズが強いため、ブロッキングバッファーの調整に移った。BSAを含め、数種類検討したが、改善しなかった。次にPTX3のN末端特異的構造に着目し、アミノ酸数を短くした抗体を、やはり数種類作成し同様の実験を行なったが、依然、非特異的結合を抑えることができなかった。また吸着ビーズの性状の可能性を考慮したがやはり改善しなかった。東京大学先端科学技術研究センターシステム生物医学に協力を依頼し検討を重ねたが、PTX3分子のを抑えることには最終的に至らず動物実験には到達することができなかった。
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