研究課題/領域番号 |
24591072
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
鈴木 洋 昭和大学, 医学部, 教授 (90266106)
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研究分担者 |
梅澤 明弘 独立行政法人国立成育医療研究センター, 生殖・細胞医療研究部, 部長 (70213486)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 閉塞性動脈硬化症 / エリスロポエチン / 細胞移植 |
研究概要 |
(1)エリスロポエチンの骨格筋における局所間葉系前駆細胞の刺激作用: エリスロポエチン(EPO)が虚血刺激に対する組織修復を改善させることが報告されているが、そのメカニズムは未だに明らかではないため、虚血肢におけるEPOによる血管新生誘導のメカニズムを検討した。EPO 5000U/kgをラット虚血肢に局所投与した。EPO投与群は対照群に比して血流が有意に回復し血管数も増加した。また、血管周囲組織におけるKi67陽性細胞数も有意に増加していた。増殖している細胞は間葉系前駆細胞のマーカーであるPDGF-αとEPO受容体に免疫陽性であった。一方、in vitro研究において、EPOはラット骨格筋から単離した培養間葉系前駆細胞を有意に増殖させAktとSTAT3のリン酸化を増強したが、血管内皮細胞は増殖させなかった。骨格筋間葉系前駆細胞のconditioned mediumは、ラット骨格筋芽細胞や骨髄間葉系前駆細胞に比してVEGF濃度は有意に高値であった。 (2)ヒトへの臨床試験へむけてのプロトコール承認:カテーテル治療やバイパス手術が不可能な難治性の閉塞性動脈硬化症に対する治療法として、骨髄間質細胞(間葉系幹細胞)の局所投与の臨床試験を計画しているが、本プロトコールを昭和大学と成育医療センターの倫理委員会で承認をうけ、その後厚生労働省のヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会でも平成25年11月に承認を受けた。 (3)総括:本年の基礎研究により、エリスロポエチンは虚血肢において一部は骨格筋における局所間葉系前駆細胞の活性化を介して血管新生を増強すると考えられた。平成25年度にヒト幹細胞臨床研究審査委員会での承認を得られ、平成26年度は臨床試験を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)基礎動物実験 昨年度の基礎研究において、間葉系幹細胞(MSC)においてエリスロポエチン(EPO)受容体が発現していることが確認でき、培養MSCにEPOを添加することにより、MSCの増殖活性が亢進した。また、細胞上清でVEGF,HGF,FGF等の濃度が上昇しており、これらの増殖因子の活性化がMSCの血管新生作用をより増強させていると考えられた。In vivo実験では、マウスで下肢虚血を作成し、その回復過程をMSC単独移植とEPOによる前処置を加えたMSC移植(エポMSC群)で比較するとエポMSC群は、MSC単独群と比べ、虚血肢での血流が有意に改善していたが、移植細胞の長期生着はみられなかった。本年度は、虚血肢におけるEPOによる血管新生誘導のメカニズムを検討した。EPO 5000U/kgをラット虚血肢に局所投与した。EPO投与群は対照群に比して血流が有意に回復し血管数も増加した。また、血管周囲組織におけるKi67陽性細胞数も有意に増加していた。増殖している細胞は間葉系前駆細胞のマーカーであるPDGF-αとEPO受容体に免疫陽性であった。一方、in vitro研究において、EPOはラット骨格筋から単離した培養間葉系前駆細胞を有意に増殖させAktとSTAT3のリン酸化を増強したが、血管内皮細胞は増殖させなかった。上記より当初の計画の基礎研究はほぼ終了した。 (2)臨床試験(安全性試験) 本プロトコールは昭和大学医の倫理委員会で平成23年12月20日に承認後、厚生労働省ヒト細胞臨床研究に関する審査委員会に提出し、約1年半を要したが平成25年4月25日了承され、平成25年11月25日に厚生労働大臣の承認を受けた。シミュレーションを施行し、患者登録を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 本プロトコールは、厚生労働省ヒト細胞臨床研究に関する審査委員会で平成25年4月25日了承され、平成25年11月25日に厚生労働大臣の承認を受けた。シミュレーションを施行し、患者登録を開始している。 1)対象:閉塞性動脈硬化症のFontaine II以上の患者(年齢20歳以上)で、薬物治療にも反応せずカテーテル治療やバイパス手術が不可能な患者5例。坦癌患者、増殖性網膜症等血管新生治療により原疾患の悪化の可能性があると判断される患者は除外する。 2)方法:①自己細胞の採取:自己骨髄20mlを局所麻酔下に患者の腸骨より採取し、ヘパリン入りPBS溶液に混和する。また、自己末梢血を約200ml採血し、遠心管に入れる。②細胞培養;分担研究施設である国立成育医療センター研究所へ搬送する。血液より血清を分離して、血清入りの液体培地を調整する。間葉系細胞は自己の骨髄液(20mL)と自己の血液(約200mL)からの血清約100mlを用いて、接着系の細胞を培養する事により増殖する。最後に搬送当日に培養細胞をフラスコより剥離しPBSに懸濁させる。以上の培養操作は国立成育医療センター研究所において無菌的に行う。③細胞移植:細胞は治療予定日に昭和大学藤が丘病院に搬送する。細胞は硬膜外麻酔下に患者の下腿のすでに虚血が証明されている箇所に合計約1×10の7乗個の細胞を移植する。虚血の証明は血管造影、血管エコー、CT,皮膚還流圧等で行う。④安全性、有効性の評価:細胞移植7日、1か月、3か月、6ヶ月、1年後に安全性の評価を行い、有害事象の発生をチェックする。有効性はvisual analogue scale (VAS)による自覚症状の評価、生命予後、下肢温存率、下腿上腕血圧比、足趾上腕血圧比、皮膚還流圧等により評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床研究の承認が遅れ、臨床研究が開始できなかったため。 臨床試験に関しては、自己血清分離キット、骨髄穿刺針、細胞培養費用、皮膚還流圧測定に関する消耗品等の臨床試験に必要な資材を購入する。
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