研究課題/領域番号 |
24591074
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
池田 隆徳 東邦大学, 医学部, 教授 (80256734)
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研究分担者 |
阿部 敦子 東邦大学, 医学部, 博士研究員 (40584644)
中沢 一雄 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50198058)
芦原 貴司 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80396259)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心臓突然死 / 心室細動 / 心電学的指標 / コンピュータシミュレーション / ホルター心電図 |
研究概要 |
平成24年度に実施した研究は、コンピュータシミュレーションによる心室細動のメカニズム解明とホルター心電計を用いて測定した心電学的指標を予備評価であった。 コンピュータシミュレーションでは、「脱分極異常、再分極異常、自律神経活動異常を反映する電気生理学的指標の統合的かつ多階層的活用」の妥当性を検証した。医療工学に精通している国立循環器病研究センターの中沢一雄室長に行っていただいた。心筋細胞の最新数学モデルを用いて心室形状モデルを作成し、人工電気刺激を与え持続性の細動興奮波(心室細動)を誘発した。興奮波をスーパーコンピュータで解析し、大規模な数値シミュレーションを行った。その結果、脱分極異常と再分極異常が絡み合うことで心室細動が成立することが判明した。 次に、実臨床においてホルター心電計を用いて心室遅延電位(late potentials:LP)、T波オルタナンス(T-wave alternans:TWA)、心拍タービュランス(heart rate turbulence:HRT)の測定を行った。測定は、東邦大学の阿部敦子博士研究員、滋賀医科大学の芦原貴司助教、杏林大学の三輪陽介助教に行っていただいた。ホルター心電図のNASA誘導およびCM5誘導において、24時間連続して3つの指標を評価した。心室LPにおいては、加算平均法により①fQRS、②RMS40、③LAS40の3つのパラメータを30分毎にタイムドメイン解析した。TWAにおいては、オルタナンス(Talt)電位を15秒毎にスペクトル解析した。HRTにおいては、turbulence onset(TO)とturbulence slope(TS)の2つのパラメータを解析した。これら3つの指標の測定をわれわれが所有している解析システムで問題なく行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度では、コンピュータシミュレーションを用いて心室細動の興奮波を解析することと、われわれが注目した心電学的指標を実臨床において予備的に評価することを達成目標に掲げていた。コンピュータシミュレーションでは、心室形状モデルで誘発した心室細動中の興奮波の解析をスーパーコンピュータで行うことができ、その成立メカニズムを知ることができた。また、実臨床においてのホルター心電計を用いた心電学的指標の評価では、3つの指標(LP、TWA、HRT)をわれわれの解析システムで問題なく行うことができた。以上の理由で、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、平成24年度に立案した研究がおおむね順調に達成できたことから、平成25年度では当初から予定していた研究を計画書に基づいて着実に行っていく。具体的には、平成25年度では、コンピュータシミュレーション解析で得られた結果の再検証と、心疾患を有する患者でのホルター心電計を用いた3指標の実臨床での測定を予定している。 コンピュータシミュレーションでは、異なる心室形状モデルを作成し、誘発した心室細動中の興奮波を解析する。平成24年度の結果と矛盾する点がないかを評価する。解析は、国立循環器病センター研究所の中沢一雄工学博士にスーパーコンピュータを用いて行っていただく予定である。 実臨床でのホルター心電計を用いた心電学的指標の解析は、平成24年度とは異なり心疾患(心筋梗塞、心筋症、特発性病態など)を有する患者で行い、3指標と心疾患の関連性を評価する。脱分極異常指標、再分極異常指標、自律神経活動異常指標のいずれが最も関与するかを検討する。測定は、東邦大学の阿部敦子博士研究員、滋賀医科大学の芦原貴司助教、杏林大学の三輪陽介助教に行っていただく予定である。 現在のところ、研究を推進していくうえで大きな問題は生じておらず、研究構成員間での連絡を密にとり、研究の進捗状況を確認しあう。何らかの疑問点が生ずれば、コンピュータシミュレーション解析のありかたや実臨床での心電学的解析指標の測定のしかたを変更することはある。具体的な今後の研究の方策を下記に記す。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算に見合った形で研究を進めている。平成24年度の未使用額が約25万円あるが、これはデータ解析用のパソコンの購入が遅れたためで、平成25年度の初期の段階でパソコンを購入する費用に充てる。 平成25年度では、得られた結果を国内あるいは国外の学会に参加して積極的に発表することを予定している。多くの予算は、学会発表のための旅費に充てる予定である。当然のことながら、データ収集および解析に必要な消耗品にも使用する。
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