研究課題/領域番号 |
24591078
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
小崎 篤志 摂南大学, 看護学部, 教授 (40330188)
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研究分担者 |
森 泰清 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40268371) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | S100A12 / 心血管イベント / 末期腎不全 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、横断的研究により末期腎不全患者550症例において血中S100A12タンパク質濃度が過去の血管障害イベントに関連している可能性を明らかとした。次に、同症例において、総死亡と新規血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の発生および死亡をエンドポイントとして、血中S100A12タンパク質濃度がその寄与因子となるかを前向き観察研究で2年間行い、①新規総死亡群の血中S100A12タンパク質濃度は非死亡群より有意に高値であること、②血中S100A12タンパク質濃度の中央値にて2分割して生存率を解析すると、S100A12濃度高値群において有意に生存率が低い事、③総死亡への寄与因子をCox比例ハザードモデルにて解析すると、血中S100A12濃度が高値である事が有意な寄与因子の一つであること(HR=2.267)、を発見し報告した。 これらの疫学的結果をふまえ、今年度は新規観察終了者297例を追加して計847例で血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)の新規発生および死亡をエンドポイントとして、血中S100A12タンパク質濃度がその寄与因子となるかを検討した。結果は前向き観察2年目終了時点において①新規血管障害死亡群(n=35)の血中S100A12タンパク質濃度は非死亡群より有意に高値であること(36.3 vs 25.6 ng/ml:p<0.01)、②血中S100A12タンパク質濃度の中央値にて2分割して生存率を解析すると、S100A12濃度高値群において低値群より有意に生存率が低い事(LR test:p=0.0001)がKaplan-Meier生存分析法で明らかとなった。 また、in vivoでの動物実験を可能とするためのS100A12タンパク質過剰発現マウスの作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RAGEのリガンドであるS100A12タンパク質の糖尿病や慢性腎臓病等による血管障害への関与を明らかにする目的で、これまでに臨床データベースの作成が終了し、症例登録後の2年間の前向きコホート研究を847例で行い、新規血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)による死亡と血中S100A12タンパク質濃度との関連を明らかに出来た。 また、他の検証方法としてS100A12タンパク質の過剰発現トランスジェニックマウスの作成を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
・研究目的1:RAGEのリガンドであるS100A12タンパク質の糖尿病や慢性腎臓病等による血管障害への関与を明らかにする。 2年間の前向きコホート研究では、観察終了症例数の増加に伴いエンドポイントの一つである血管障害イベント(脳血管障害、心血管障害、四肢虚血疾患)による新規死亡とS100A12タンパク質濃度の関連がKaplan-Meier法で有意となった。次年度には3~5年目のイベントの調査を行い統計解析してゆく予定である。 ・研究目的2:動脈硬化性血管障害の機序の一つと考えらえている慢性炎症へのS100A12タンパク質の関与を検討するために、ヒトの白血球におけるS100A12のフローサイトメトリー解析を確立する。 フローサイトメトリー解析にてヒト白血球のS100A12タンパク質発現の定量化を試みたが、バックグラウンドの高値を改善できず一旦実験を中止している。 他の検証方法としてS100A12タンパク質の過剰発現トランスジェニックマウスの作製を終了した。これを用いた実験によりS100A12タンパク質の慢性炎症や石灰化作用への関与を検証してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に大型機器の購入を予定したため。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度に、外部委託している血液検査を当該施設で行えるように、血液分析装置を購入予定であるため。
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