研究課題/領域番号 |
24591081
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
高瀬 凡平 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 准教授 (50518214)
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研究分担者 |
石原 雅之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 教授 (10508500)
田中 良弘 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 講師 (50533981)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 該当なし |
研究概要 |
摘出心臓の光学的解析手法(optical mapping analysis)は致死性不整脈病態生理解明に有力である。本年度は、ラット肺動脈性高血圧モデルの致死性不整脈におけるmechanoelectric transdaction の関与を検討するため「モノクロタリン(MCT)誘導型ラット肺動脈性高血圧モデル」を用いて、右心室圧測定、optical mapping analysis 、電気生理学的致死性不整脈誘発法及び心筋組織変化(心筋のリモデリング)から検討した。更に、肺動脈性高血圧治療薬剤を用い薬理学的に検討した。ラットにMCT 60mg/kg投与して肺高血圧症を作成,Langendorff灌流心にoptical mapping analysisを実施した。結果、右室圧の上昇に伴って右室伝導速度遅延と異常伝導パターンが認められた。また、心筋再分極時間の不安定性を示す指標action potential duration dispersion(APDd)が重症の肺高血圧症の存在下でのみ認められた。致死性不整脈誘発法によると、APDd異常が明らかな場合にのみ右心室起源致死性不整脈が誘発された。また、MCT投ラット右心室で、細胞外マトリックスI型コラーゲンのmRNA発現増強と心筋伝導蛋白Connexin43 のmRNA発現減弱が認められた。これらはSildenafilとBeraprost併用療法によって抑制された。SildenafilとBeraprost併用療法で肺高血圧症が改善すれば、病理学的変化の抑制、致死性不整脈誘発も改善され、病的右心室圧負荷と致死性不整脈発生の密接な関係が証明された。本研究は、重症肺高血圧症では、右心室圧負荷より電気的リモデリングと心筋活動電位持続時間のばらつき(APDd異常)が生じ、右心室不整脈源性が生じることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学的解析手法(optical mapping analysis)は不整脈の発生機序の解析に極めて有用である。 平成24 年度は、ラットにモノクロタリン(MCT)60mg/kg投与して肺高血圧症を作成、摘出Langendorff灌流心を用いoptical mapping analysisを実施し、合わせてSildenafilとBeraprost併用療法を施行して、重症肺高血圧症による右心室圧負荷より右心室起源の致死性不整脈が誘発されるか検討した。結果、重症肺高血圧症では、右心室圧負荷より電気的リモデリングと心筋活動電位持続時間のばらつき(APDd異常)が生じ、右心室不整脈源性が生じることが示された。 また、SildenafilとBeraprost併用療法で肺高血圧症が改善すれば、病理学的変化の抑制、致死性不整脈誘発も改善された。これらは、病的右心室圧負荷と致死性不整脈発生の密接な関係を示唆する。即ち、機械的刺激(圧負荷)が電気的異常(不整脈)を起する機序、いわゆるmechanoelectrictransduction が肺動脈性高血圧症を始めとする右心負荷時の致死性不整脈の病因であることを支持する所見と考えられる。 これらの結果は、本研究の主目的である「mechanoelectrictransduction が肺動脈性高血圧症を始めとする右心負荷時の致死性不整脈の病因であるか否か」を明らかにするうえで重要な結果である。本研究を踏まえ、さらに肺全摘手術術後の右心室負荷モデルや肺動脈結紮ラットモデル等の右心室圧負荷モデルにて、平成24 年度と同様の検討を行うことができ、目的を明らかにする予備実験として有用と考えられた。以上より、本年度の研究実績は本研究の目的達成に充分貢献するものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
右心負荷時の致死性不整脈におけるmechanoelectrictransductionの役割を更に明らかにするため、平成25年度は、病的右心室圧負荷を惹起する肺手術術後及び肺動脈狭窄モデルを作成し、右心室負荷時の催不整脈性に関する検討を深める。 即ち、SDラットの左片肺を全摘出し、1日後、4日後、1週間後、2週間後、4週間後(肺手術術後モデル)、及び18G針をラット肺動脈起始部に挿入し、肺動脈と18G針を結紮、直後18G針抜去し、90%以上の肺動脈狭窄作成、3時間後(肺動脈狭窄モデル)に、肺動脈圧を測定し、心臓を摘出、Tyrode液で潅流、Na channel脱分極感受性色素(di 4 ANEPPS)で染色し、心室の脱分極様式・速度・活動電位の不均一性(action potential duration dispersion, APDd)を測定する。また、電気生理学的致死性不整脈誘発法にて心室頻拍・細動の誘発を試みる。 更に、平成24 年度に備品と購入した心筋細胞内のCa2+の動態測定装置を用いて、肺手術術後・肺動脈狭窄モデル等の右心室圧負荷モデルにおいて、mechanoelectric transdaction に関与する細胞内Ca2+が増加するか否か検討する。また、電気生理学的誘発法により心室細動が誘発される際に、心筋細胞内のCa2+の増加を伴うか否かを検討し、早期撃発活動(EAD: early after repolarization)が心室細動の誘発の機序となりうるかを検討する。細胞内Ca2+の検討に際しては、心筋活動電位変化を反映するNa channel脱分極感受性色素による測定結果と同時測定を実施して、より効果的に実験目的の達成を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においては、細胞内Ca2+測定に必要な特殊な染色液や試薬の購入のために消耗品の予算として研究費を執行する予定である。
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