研究概要 |
血管新生因子VEGF-Aは肥満に密接に関連するが、その血中レベルが動脈硬化に及ぼす影響はわずかであった。我々はリンパ管新生因子VEGF-CがVEGF-Aよりも脂質異常、動脈硬化と密接に関連することを見出した。しかしながら、VEGF-Cレベルは冠動脈疾患重症度に従ってむしろ有意に低下していた。VEGF-Cは、高食塩食負荷に対してマクロファージから代償的に分泌されるが、脂質異常でも同様に、脂質や炎症細胞をドレナージするために、代償的に分泌されるのかもしれない。重症冠動脈疾患では、その代償機構が破綻している可能性がある。 初年度は、動脈硬化におけるVEGF-Cの役割を検討するために、ApoE欠損マウスに高脂肪食を負荷して、合成VEGF-C, VEGF-A, VEGFR-2, VEGFR-3蛋白,または生食を投与して、血清と大動脈のサンプルを確保した。また、ヒトマクロファージの機能の動脈硬化の関連を検討するために、ヒトの末梢血単球からRNAを抽出した。今後PCR法によりVEGF-Cの発現レベルを測定する。 最後に、VEGF-Cレベルと心血管イベント発症の関連を明らかにするため、安定した外来患者511名から同意を得て登録し、前向きコホート試験を実施した。フォローアップは3年間、一次アウトカムは主要心血管イベントとした。フォローアップの中央値は873日 (IQR: 384-1,080)であった。主要心血管イベントは61名(12%)に発症した。患者をROC解析により得られたVEGF-Cの最適なカットオフ値で2群に分けて比較検討した。カプランマイヤー解析の結果、主要心血管イベント発症率は低VEGF-Cグループの方が有意に高かった。危険因子を含む多重Cox比例ハザード解析の結果、低VEGF-Cは主要心血管イベントと独立した関連を認めた。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫染色試薬 100,970円, 抗CD31抗体 80,000円, 抗Lyve-1抗体 80,000円, PCR primer 50,000円, PCR試薬 300,000円, ヒトVEGF-C ELISA kit 780,000円, マウスVEGF-C ELISA kit 150,000円 合計 1,540,970円
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