研究課題/領域番号 |
24591082
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
和田 啓道 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 展開医療研究部, 研究室長(先端医療技術開発) (20416209)
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研究分担者 |
佐藤 哲子 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 糖尿病研究部, 研究室長(臨床代謝栄養) (80373512)
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キーワード | 動脈硬化 |
研究概要 |
血管新生因子VEGF-Aは肥満に密接に関連するが、その血中レベルが動脈硬化に及ぼす影響はわずかであった。我々はリンパ管新生因子VEGF-CがVEGF-Aよりも脂質異常、動脈硬化と密接に関連することを見出した。しかしながら、VEGF-Cレベルは冠動脈疾患重症度に従ってむしろ有意に低下していた。VEGF-Cは、高食塩食負荷に対してマクロファージから代償的に分泌されるが、脂質異常でも同様に、脂質や炎症細胞をドレナージするために、代償的に分泌されるのかもしれない。重症動脈硬化性疾患では、その代償機構が破綻している可能性がある。 動脈硬化におけるVEGF-Cの役割を検討するために、昨年度、ApoE欠損マウスに高脂肪食を負荷して、合成VEGF-C, VEGF-A, VEGFR-2, VEGFR-3蛋白,または生食を投与して、血清と大動脈のサンプルを確保し、大動脈の凍結切片を作成した。Oil Red O染色を行い、動脈硬化プラークの定量化を実施中である。 ヒト末梢血単球の形質(M1/M2)によりVEGF-C発現に違いがあるかどうかを検討するために、肥満・糖尿病患者の末梢血単球からRNAを抽出した。今後PCR法によりVEGF-CおよびVEGF-Aの発現レベルを定量化・比較検討する。 ヒト動脈硬化プラークにおけるリンパ管数/血管数のバランスとVEGF-C/VEGF-A発現レベル、血清VEGF-C/VEGF-Aレベルを検討するため、頸動脈剥離術を行った頚動脈狭窄症の動脈硬化プラークサンプルと血清を回収した。 最後に、VEGF-Cレベルと心血管イベント発症の関連を明らかにするため、安定した外来患者673名から同意を得て登録して、前向きコホート試験を実施している。フォローアップは3年間、一次アウトカムは主要心血管イベントとして、現在もフォローアップ中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験は、血清を確保、大動脈については切片作成後、一部染色も終了しており、順調に進んでいると言える。 ヒト末梢血単球については、RNAを回収しており、臨床データも収集しており順調に進んでいる。 頚動脈剥離術により得られた動脈硬化プラークも回収しており、この点は予定より進んでいる。 コホート研究については、673例の患者登録を終え、現在追跡中であり、ほぼ予定通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験についてはApoE欠損マウスに高脂肪食(あるいは正常食)を16週間負荷した後に摘出した大動脈起始部の動脈硬化巣(Oil Red O染色)の定量化を完成させ、その他の免疫染色を進めていく。 頚動脈プラークにおける血管新生をCD31染色で、リンパ管新生をLYVE-1染色で評価し、両者のバランスと動脈硬化重症度の関連について検討する。同時に血清のVEGF-CレベルもELISA法で測定して、プラークにおけるリンパ管新生、血管新生との関連を明らかにする。 ヒト末梢血単球実験については、肥満・脂質異常・糖尿病患者の末梢血単球から抽出したRNAを用いて、M1/M2マーカー、VEGF-Cの発現レベルをQ-PCR法で定量化し、単球の形質とVEGF-Cの発現レベルの違いがないかどうかを検討する。 コホート研究については、未だ追跡中の一部の患者についてフォローアップデータを収集して、登録時の血清VEGF-Cレベルと心血管イベントの関連を検討する。さらにFramingham risk score、NT-proBNPレベル、高感度CRPレベルといった、良く知られた心血管イベント予知因子についても検討し、既存の危険因子とこれらのバイオマーカーによって計算される心血管イベントの予測能が、VEGF-Cレベルを付加することによって、有意に向上するかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの凍結切片作成に時間を有したため、使用期限のある免疫染色抗体を購入する時期を遅らせたため。 本年度の実験に使用する免疫染色の抗体を購入する。
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