研究課題/領域番号 |
24591087
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
稲垣 正司 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80359273)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 循環器 / 心筋梗塞 / 心不全 / 不整脈 / 自律神経 |
研究概要 |
【心筋梗塞急性期の短期間迷走神経刺激が心筋梗塞後急性期の心機能に及ぼす影響の検討】麻酔下にミニブタの胸部の右迷走神経に神経刺激装置の植え込みを行い、2週間後に、PTCA用バルーンを用いて麻酔下に経皮的に左冠動脈前下行枝近位部を閉塞し、その後再灌流した。迷走神経刺激治療群と非治療群に無作為に振り分けて、治療群では再灌流後30分より平均心拍数を10~20%低下させる強度で迷走神経刺激を3日間行った。非治療群では、心拍出量は2.1/minから虚血再灌流120分後に1.5l/minに減少したが、1週間後には2.2l/minと回復を示した。PCWPは4.5mmHから虚血再灌流120分後に10.0mmHg、1週間後に9.3mmHgと上昇した。心エコー上、左室拡張末期径は28.1mmから虚血再灌流120分後に30.9mm、1週間後に31.7mmと増大した。左室駆出率は、60.6%から虚血再灌流120分後に34.2%、1週間後に32.3%と低下した。迷走神経刺激によって、虚血再灌流120分後までの血行動態に大きな変化はなかった。覚醒後には迷走神経刺激により咳嗽が出現し、予定の強度で迷走神経刺激を続けることは困難であった。 【臨床応用可能な低侵襲な迷走神経刺激方法の開発】市販されている電気生理学的検査用マッピングカテーテルを用いてミニブタの上大静脈内で心拍数の低下を指標に迷走神経刺激に最適な部位を探索した。麻酔下において、全例において血管内からの迷走神経刺激によって心拍数を10%以上低下させることが可能であった。しかしながら、わずかな体位変換によって電極が移動するため、継続した神経刺激は困難であった。血管造影の結果、刺激至適部位付近で上大静脈は大きく屈曲していることが明らかとなり、ミニブタでは3日間にわたって安定して迷走神経刺激が可能なカテーテルを作成することは困難と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、関連する先行研究で一般的に用いられており、虚血再灌流モデルが確立されているミニブタを用いて実験を行った。PTCAバルーンを用いた虚血再灌流によって、臨床で見られる心筋梗塞患者と類似した病態を作成することが可能であったが、平均心拍数を10~20%低下させる強度での迷走神経刺激によって強い咳嗽が出現したため継続した迷走神経刺激を行うのが困難であり、迷走神経刺激の治療効果を検証するに至らなかった。また、ミニブタの上大静脈は高度に屈曲していたため、血管内に安定して留置できるカテーテルを開発するに至らなかった。しかしながら、このような問題の発生は研究計画に考慮されており、実質的な遅れは僅かである。
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今後の研究の推進方策 |
【心筋梗塞急性期の短期間迷走神経刺激治療の検討】平成25年度より実験動物をイヌに変更して、虚血再灌流モデルとしての可否を検討した後、迷走神経刺激による治療効果の検討を行う。 【臨床応用可能な低侵襲迷走神経刺激方法】平成25年度より実験動物をイヌに変更して、3日間程度の間安定して迷走神経を持続的に刺激できる血管内神経刺激電極の開発を行う。血管内からの安定した迷走神経刺激が困難な場合は、内視鏡を使用した低侵襲手術により頸部または胸部迷走神経に短時間に神経刺激電極を装着する手技の開発に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はミニブタにおける迷走神経刺激が困難であったために、迷走神経治療の評価に使用した動物数が予定より大きく減少した。このため、治療効果の評価のために消耗品として計上していた各種カテーテル、試薬の購入が大きく減少し。当該研究費が発生した。平成25年度には動物種を変えて平成24年度に実施予定であった実験を行う予定である。このため、平成25年度には、当初予算に加えて当該研究費を使用する。
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