研究課題/領域番号 |
24591087
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
稲垣 正司 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80359273)
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キーワード | 循環器 / 心筋梗塞 / 心不全 / 不整脈 / 自律神経 |
研究概要 |
【心筋梗塞急性期の短期間迷走神経刺激が心筋梗塞後慢性期の心臓リモデリングに及ぼす影響の検討】平成24年度の研究により、ミニブタは虚血再灌流モデルとして適しているが覚醒下での迷走神経治療が副作用のため困難であることが明らかとなった。本年度は、実験動物をイヌに変更し、イヌ虚血再灌流モデルの確立から実験を行った。PTCA用バルーンを用いて麻酔下に経皮的に左冠動脈前下行枝近位部を90分閉塞し、その後再灌流した。4週後に心臓を摘出し梗塞サイズを計測した。イヌでは、側副血行路により左冠動脈前下行枝近位部の閉塞のみでは虚血領域の形成が困難なため梗塞サイズは0~5%であり、実験モデルとして不適切と考えられた。このため、血管閉塞用コイルを用いて予め側副血行路を閉塞した後にPTCA用バルーンを用いて左冠動脈前下行枝近位部を閉塞するモデルを新たに開発した。本モデルの梗塞サイズは20~40%と安定しており実験モデルとして適していると考えられた。また、イヌでは心拍数を10%低下させる強度での迷走神経刺激を覚醒下に行っても咳などの副作用の出現は軽微であった。 【臨床応用可能な低侵襲迷走神経刺激方法】実験動物をイヌに変更して、3日間安定して迷走神経を持続的に刺激できる血管内神経刺激電極の開発を行った。市販されているバスケット型カテーテルを改良して神経刺激用カテーテルを試作した。試作カテーテルを用いて上大静脈内から迷走神経を刺激し、10%以上の心拍低下を得ることが可能であった。留置3日後に刺激閾値の上昇が見られたが、3日間にわたって迷走神経の刺激が可能であった。また、内視鏡を使用した低侵襲手術により胸部迷走神経に神経刺激電極を装着する手技の開発を行い、約30分で電極を装着する手技を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、虚血再灌流モデルが確立されているミニブタを用いて実験を行ったが、ミニブタでは覚醒下の迷走神経刺激によって強い咳嗽が出現したため継続した迷走神経刺激が困難であり、迷走神経刺激の治療効果を検証する実験に至らなかった。また、ミニブタの上大静脈は高度に屈曲していたため、血管内に安定して留置できるカテーテルを開発するに至らなかった。このため、実験動物を変更して実験を繰り返す必要が生じた。 虚血再灌流モデルにおける迷走神経刺激治療効果を確認する課題においては、イヌにおいて虚血再灌流モデルを新たに確立する必要があったため、研究計画から遅れを生じている。しかし、新しい病態モデルが確立され、研究課題から派生した副次的成果を得ている。 臨床応用可能な低侵襲迷走神経刺激方法の確立に関する課題では、昨年度に動物種の影響による遅れが生じたが、本年度は実験動物を変更することにより大きく進展したため、研究計画に遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度に確立したイヌ虚血再灌流モデルを用いて、心筋梗塞後3日間の迷走神経刺激が初期リモデリングおよび慢性期リモデリングにおよぼす影響について検討する。機械的リモデリングおよび電気的リモデリングの検討を予定するが、優先順位をつけて実施する。初期リモデリングにおいては不整脈抑制効果、慢性期リモデリングにおいては機械的リモデリング・心機能におよぼす影響の検討に注力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究においては、虚血再灌流モデルとして使用する実験動物をミニブタからイヌに変更する必要が生じた。イヌにおける虚血再灌流モデルは確立されていないため、実験モデルの確立から取り組む必要が生じ、研究計画に遅れが生じた。このため、平成25年度に実施予定であった「心筋梗塞急性期の短期間迷走神経刺激が心筋梗塞後慢性期の心臓リモデリングに及ぼす影響の検討」の大部分の実施を延期する必要が生じ、次年度使用額が生じた。イヌ虚血再灌流モデルの確立においては、他の実験の使用積み動物を利用するなどして経費の削減に努めたため、使用額は少なく収めることが可能であった。 平成25年度に実施予定であった「心筋梗塞急性期の短期間迷走神経刺激が心筋梗塞後慢性期の心臓リモデリングに及ぼす影響の検討」の実施に使用する。
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