【臨床応用可能な低侵襲迷走神経刺激方法の開発】心筋梗塞急性期での使用を目的として、経血管的に3日間以上安定して胸部迷走神経刺激が可能な電極カテーテルの開発を行った。市販されているバスケット型カテーテルを改良して神経刺激用カテーテルを試作し、イヌの上大静脈内から迷走神経を刺激した。試作カテーテルは約15分で留置可能であり、刺激によって10%以上の心拍低下を得ることが可能であった。留置3日の間に刺激閾値は軽度上昇したが、大きな合併症なく3日間にわたって迷走神経の刺激が可能であった。また、胸腔鏡を用いたた低侵襲手術により胸部迷走神経に装着する神経刺激電極および装着手技の開発を行い、約30分で装着可能な神経刺激電極システムを開発した。今後、本研究成果の臨床実用化は十分に可能と考えられる。 【心筋梗塞急性期の短期間迷走神経刺激が心筋梗塞後の心臓リモデリングに及ぼす影響の検討】麻酔下にミニブタの右胸部迷走神経に胸腔鏡を用いて神経刺激装置の植え込みを行い、PTCA用バルーンを用いて左冠動脈前下行枝近位部を90分閉塞した後再灌流した。迷走神経刺激治療群と非治療群に無作為に振り分けて、治療群では再灌流後30分より心拍数を約10%低下させる強度で迷走神経刺激を3日間行った。心拍出量・左室拡張末期圧・左室圧最大微分値などの血行動態の指標や、心エコー上の左室拡張末期径・左室駆出率、心重量には、非治療群と治療群に有意な差を認めなかった。しかしながら、左室梗塞領域は、非治療群(18.5%)に対し治療群(1.3%)と有意に縮小していた。 心筋梗塞急性期の3日間の迷走神経刺激によって梗塞領域縮小効果が認められ、急性心筋梗塞に対する新しい治療法としてカテーテルや内視鏡手術による低侵襲迷走神経刺激は有望と考えられた。
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