研究課題
筋特異的ユビキチンE3ライゲースであるMAFbxの心臓リモデリングにおける役割を検討するために、MAFbx遺伝子欠損マウスとその同腹のワイルドタイプマウスに左冠動脈の結紮による心筋梗塞モデルを作成した。心筋梗塞後の死亡がおよび、術後3-7日での心破裂がMAFbx遺伝子欠損マウス群でワイルドタイプ群より有意に少ないことを昨年度までに明らかにした。心筋梗塞作成3日後の心筋組織からmRNAを抽出し、cDNA microarrayにて、網羅的遺伝子解析を行い、心筋梗塞を作成したMAFbx遺伝子欠損マウス群と同腹のワイルドタイプマウス群の解析で、MAFbx遺伝子の有無でクラスターが形成され、クラスターを形成した遺伝子群の中で、ワイルドタイプ群で上昇し、MAFbx遺伝子欠損群で低下を認めた遺伝子の中に、MMP9が含まれていることを明らかにした。心破裂には、ゼラチナーゼであるMMP9の活性が重要な役割を持つことが報告されている。そこで、MMP9の活性を評価するため、ザイモグラフィーを、MMP9の発現量評価のためmRNAを抽出しreal-time PCR法を行った。心筋梗塞作成3日後の心筋組織からタンパクを抽出し、ゼラチンザイモグラフィーでMMP9活性を評価したところ、心筋梗塞で誘導されるMMP9の活性上昇が、MAFbx遺伝子欠損マウス群で、ワイルドタイプ群と比較して低下していた。また、心筋梗塞モデル作成1日後の心臓を摘出し、MMP9のmRNAレベルを検討したところ、心筋梗塞で誘導されるMMP9の発現増加が、MAFbx遺伝子欠損マウス群で、ワイルドタイプ群と比較して低下していた。以上の結果から、MAFbx遺伝子欠損マウス群でワイルドタイプ群を比較して、心破裂が少ないのは、心筋梗塞により誘導される、MMP9活性を減少させることによりもたらされている可能性が示唆された。
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