研究課題
本研究の目的は、心臓および全身のエネルギー代謝におけるインスリン・シグナルおよび分枝鎖アミノ酸の役割を、ミトコンドリアを中心として解析することである。本年度の成果は以下のとおりである。①心不全モデルのおける腎臓の代謝変化を検討したダール食塩感受性ラットは高塩分食を食べると高血圧を発症し、心肥大はあるが心機能は保たれ全身の神経体液性因子活性化は起こっていない心肥大期(11週齢)を経て、非代償性の心不全を発症する心不全期(18週齢)に移行した。低塩分食を与え高血圧を発症しないダール食塩感受性ラットをコントロールとした。心不全ラットではコントロールに比べ、腎機能が減少していた。腎臓組織を用いて、ミトコンドリア機能に関連する遺伝子の発現を検討した。また、メタボローム解析を行い、分枝鎖アミノ酸を含むアミノ酸、解糖系、クレブス回路、ペントース・リン酸回路、核酸などの代謝産物量を測定した。②心不全モデルにおける分枝鎖アミノ酸の効果を検討したダールラット心不全モデルに分枝鎖アミノ酸を飲水にまぜて慢性投与し生存率と心機能を検討した。本モデルにおいては11週齢以降、ラットは心不全を伴い死亡する。分枝鎖アミノ酸投与はラットの生存率を改善させた。また心臓超音波検査により心機能を計測すると、分枝鎖アミノ酸投与による心機能改善が見られた。分枝鎖アミノ酸は心不全に伴う心重量増加に影響を与えなかった。心臓組織と骨格筋を用いて、ミトコンドリア機能に関連する遺伝子の発現を検討したところ、分岐鎖アミノ酸は心不全に伴うミトコンドリア機能関連遺伝子発現の異常を是正していることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
心不全モデル動物の腎臓における代謝変化を検討しえた。また、分枝鎖アミノ酸が心不全ラットの生存率と心機能を改善する機序としてミトコンドリア異常の是正がある可能性が示された。
分枝鎖アミノ酸が心不全を改善するメカニズムを明かにするために、メタボローム解析および遺伝子発現解析により、分枝鎖アミノ酸の標的となっている分子を同定し、タンパク量、活性を測定する。
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PLoS One
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J Mol Cell Cardiol.
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