研究課題/領域番号 |
24591098
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋口 義洋 九州大学, 大学病院, 助教 (40404032)
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研究分担者 |
小柳 雅孔 九州大学, 大学病院, 助教 (00325474)
前田 豊樹 九州大学, 大学病院, 准教授 (30264112)
牧野 直樹 九州大学, 大学病院, 教授 (60157170)
新留 琢郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (20264210)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心臓局所温熱 / 金ナノロッド / 近赤外線レーザー / 心不全 |
研究概要 |
[具体的研究内容] マウスの心臓限局温熱システムの開発。 (1)マウスの心嚢膜に金ナノロッドを注入する確実な方法の開発:具体的にはマウスに気管内挿管した後、肋骨を切開し直接心嚢膜内に極細注射針で金ナノロッドを50μL注入。注射後の心嚢膜の穴は手術用接着剤で封印する。(2)レーザー照射の条件設定と温度測定: 近赤外レーザーを200から360mWまで段階的に変化させ、好感度サーモメーターにより表面温度を測定。さらに直腸内温度センサーで深部体温を測定した。その結果、260mW照射により照射部位の表面温度は約42℃に上昇することがわかった。直腸温度には変化は認められなかった。以後の実験はこの条件で行った。(3)心筋内HSPの発現の測定:上記の条件で心臓表面にレーザー照射(約10分)後、心臓を取り出してWestern blotによりHSPの発現を測定した。コントロールの金ナノロッドなしと比較しHSPの上昇が認められた。ただし、HSPの発現が認められない個体もあるためさらなる条件設定が必要である。 [意義・重要性] 金ナノロッドを用いた心臓局所温熱により心筋内HSPの発現を可能にした。これまでの全身温熱では全身の臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、腸管など)が加温されていたため、心臓のみの温熱効果が明らかではなかった。さらに、全身温熱には脱水などの全身への影響も避けられなかった。今後、心臓局所温熱の心機能や全身への影響を研究し、全身温熱と比較することにより局所温熱の優位性を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの心嚢膜は、当初の予想より破れやすく、極細シリコンチューブを留置して金ナノロッドを注入するシステムの開発を目指したが、成功率が低いため直接心嚢膜に注入する現在の方法に落ち着いた。 詳細なレーザー照射条件設定を行うために、共同研究者からレーザー照射システム一式を借り受け、予備実験を行った。ある程度めどがついたため当初の予定通りレーザーシステムを購入したが、当初予定した規格ではなく、レーザーパワー調節ができないタイプであったため無償交換してもらった。以上の理由からレーザーシステムの納入が遅れてしまい。実験スケジュールにやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)心臓限局温熱の心不全モデルマウスへの効果を検証する:心臓限局温熱の心機能への影響を見るために、心機能を連続測定するためのモニター類(観血的心内血圧測定装置/心電図モニター付属)を購入する。これにより全身温熱と心臓局所温熱の血行動態への影響の違いが明らかになる。さらに、心不全マウスへの効果を明らかにすることで、心不全治療への応用の可能性を明らかにする。(2)抗HMGB1抗体と心臓限局温熱のハイブリッド治療の効果を明らかにする:予備実験にて全身温熱と抗HMGB1抗体の投与による心筋炎の改善が認められたことから、心臓限局温熱と抗体とのハイブリッド治療と比較する。以上の主たる研究項目以外に以下の実験も予定している。 [心筋病理](1)Haematoxylin-eosin染色にて細胞浸潤計測。(2)Masson’s trichrome染色にて心筋線維化計測。 [心筋タンパク発現その他](1)アラーミン(HSP72・HMGB1)とアラーミンレセプター(TLR2/4・RAGE)(2)炎症性サイトカイン(TNF-α, IL1-β, IL-6)(3)抗酸化酵素(catalase, superoxide dismutase, glutathione peroxidase)(4)eNOS・iNOS(5)核内蛋白p50/p65の測定。Gel-shift assayによるNF-κB活性の測定。ZymographyによるMMP1, 2, 9活性の測定。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には心機能を連続測定するためのモニター類(観血的心内血圧測定装置/心電図モニター付属)の購入を計上した。これらにより、下記の検査項目の評価が可能になる。 (1)圧計測カテーテルを内頸動脈から挿入し左室内腔-容積の計測を行う。 (測定項目;TAU, dV/dt, dP/dt, stroke volume, max-dP/dt) (2)心電図モニターにて心拍数の変化を記録する。
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