研究実績の概要 |
[具体的研究内容] 心筋特異的TNFα過剰発現心不全(TG)マウスの尾静脈からポリエチレングリコール修飾した金ナノロッド(GNRs)を注入し、心臓へのGNRsの集積および温熱効果を明らかにした。①GNRs(Au 平均1.66mM)を6か月齢のTGマウスと正常マウス(WT)に尾静脈投与した(10 μL/g 体重)。24~48時間後に心臓と脾臓を取り出し、臓器に含まれる金重量を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)にて測定した。その結果、脾臓に含まれる金重量はTGマウスとWTマウスで変化なかったが、心臓にはTGマウスの方が約2倍量の金の集積が認められた。WT vs. TG; 96.2±40.6 vs. 81.7±24.1 ng/mg (脾臓, P>0.05), 22.2±8.6 vs. 42.3±25.3 ng/mg (心臓, P<0.05) 。②電顕像でGNRsがTGマウス心筋内に存在していることを証明した。③近赤外線レーザー照射により、心臓に取り込まれたGNRsが発熱するかを、高感度サーモメーターとWestern botにより明らかにした。近赤外線レーザー(260mW)10分照射によりGNRs投与TGマウスの心臓にはHeat shock protein(HSP)90の発現が認められたが、同様の処置をしたWTマウスの心臓には近赤外線レーザー照射してもHSP90の発現は認められなかった。 [意義・重要性] ポリエチレングリコール修飾したGNRsが心不全マウスの心筋に集積することを初めて明らかにした。さらに、心臓に集積したGNRsを近赤外レーザー照射で発熱させることにより心筋にHSP90が発現した。将来的にはGNRsを抗体修飾することで効率的に心不全心筋へGNRsを集積できると考えられる。以上、心臓限局温熱療法による心不全治療開発の基礎研究として意義のある研究と考えられた。
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