研究課題
ラット心筋梗塞モデルを作製し、梗塞4週間後、梗塞サイズや血圧には差がないように、非処置群と両下肢の一過性虚血処置群(remote ischemic post-conditioning: RIC群)の2群にランダムに分けた。両下肢の一過性虚血処置は、乳児用止血バンドを用いて両下肢の一過性虚血処置(5分虚血および5分開放を5クール)を毎日行い、非処置群は麻酔のみを毎日行った。4週間後、RIC群および非処置群、非梗塞群について、血圧及び心拍数測定、心機能評価を行った。RIC処置群と非処置群との間に体重や血圧・心拍数の差はなく、心筋梗塞サイズも同等であったが、非処置群に比べてRIC群では左室収縮末期容量は有意に減少し、左室駆出率が有意に改善した。また、梗塞境界領域の線維化率はRIC群で有意に抑制された。剖検時に採取した血清中の酸化ストレス度は、非梗塞群に比べて非処置群では約1.6倍に上昇していたが、RIC群の酸化ストレス度は非処置群に比べて有意に低下しており、RIC処置により慢性心不全で亢進している酸化ストレスを抑制出来ることを初めて明らかにした。遠隔部位での一過性の虚血処置により心保護作用を認めたことから、細胞間の情報伝達機構、特に、血清中に存在するエクソソームに焦点を当ててさらなる解析を行った。エクソソームはRNA発現を制御するマイクロRNAやタンパク質を豊富に含むことが知られている。興味深いことに、非処置群のエクソソーム中では、線維化に関与するRNAを制御しているマイクロRNA29等の発現が低下していたのに対して、RIC群のエクソソーム中ではこれらのマイクロRNA発現が増加した。骨格筋細胞を低酸素状態にすると、培養液中のエクソソームに含まれるこれらのマイクロRNA発現が増加したことから、骨格筋由来のエクソソームが心保護作用を発揮したものと考えられた。
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