本年度も、新生仔ラット培養心筋細胞、低酸素・再酸素化障害におけるGLP-1作動薬の細胞死軽減作用、それに伴うミトコンドリア保護とミトコンドリア品質管理因子の関係をさらに検討した。GLP-1作動薬は、ミトコンドリアfusion因子の保持に働き、生存心筋細胞あたりのATP含量を低酸素再酸素化後も保持していた。しかし、ミトコンドリア生合成に働くPCG1α発現には影響せず、ミトコンドリア量とは独立した融合に伴う機能保持が、エネルギー代謝改善につながったと考えられる。 神経体液性因子とミトコンドリアの関連では、アンギオテンシンII(10-7 M)、アルドステロン(10-7 M)、ノルエピネフリン(10-5 M)の細胞障害、ミトコンドリア品質管理因子への影響を検討した。アンギオテンシンII、アルドステロンは有意な影響を与えなかったが、ノルエピネフリンは細胞死を増加させ、細胞死増強に伴い膜電位の低下した障害ミトコンドリアを増加させた。しかし、障害ミトコンドリア処理に関わる、fission因子であるDrp1発現、Mitophagy誘導に関わるParkinの減弱が認められ解離した結果となった。障害ミトコンドリアの処理不全が細胞死増強につながった可能性が考えられる。 In vivo心筋梗塞モデルにおいて、梗塞後リモデリング軽減に働き、ミトコンドリア融合因子増強、ミトコンドリア機能保持作用を示したイコサペンタエン酸(EPA)を、直接培養心筋細胞に投与し、その後の低酸素再酸素化障害に与える影響を検討した。EPAを各種濃度、前投与期間を変動させ投与したが、いずれも細胞障害増強を来し、in vivoの慢性的な保護作用と一致した結果が得られなかった。
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