研究課題
平成24年度から、慢性心不全モデルであるDahl食塩感受性高血圧ラットを用いて、慢性心不全における鉄代謝異常、貧血の発症機序、貧血の治療法について検討してきた。平成26年度は赤血球寿命の短縮、骨髄における赤芽球系細胞のアポトーシス、造血幹細胞およびそのニッシェの異常、髄外造血が関与するかどうかを検討した。また、貧血に効果があると考えられる漢方薬十全大補湯の投与がどのような影響を及ぼすかを検討した。すなわち以下の3群での検討を行った。(1) LS群:常食を続ける。(2)HS群:6週齢で8%NaCl食を開始する。(3) HS+十全群:6週齢で8%NaCl食を開始し、10週齢から十全大補湯1.25g/kg/dayを投与する。12週齢でN-hydroxysuccinimide-biotin (40 mg/kg)を3日連続尾静脈から静脈注射し、赤血球をラベリングし、その後3~4日毎に尾静脈から100μl採血し、antistreptavidin fluorescein isothiocyanate antibodyを用いてラベルされた赤血球をフローサイトメーターでカウントし、赤血球の半減期を求めた。その結果、HS群では赤血球半減期の著明な低下が見られた。一方、十全大補湯の投与により赤血球半減期の改善は見られなかった。大腿骨から採取した骨髄細胞において、赤芽球系細胞のアポトーシスの頻度に有意な差を見出すことはできなかった。脾臓や骨髄において、赤芽球系細胞の頻度は増加しており、骨髄内外において活発に造血は行われていた。十全大補湯がDSラットの貧血に有効であることが分かったので、交感神経系の関与を検討することよりも十全大補湯が予後に及ぼす影響を検討することを優先した。十全大補湯はHS群の予後を改善させることはできなかった。
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J Hypertens
巻: volume 33(6) ページ: 1267-1275
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