研究課題/領域番号 |
24591107
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
石垣 泰 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50375002)
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研究分担者 |
澤田 正二郎 東北大学, 大学病院, 助教 (60509420)
高 俊弘 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70455781)
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キーワード | 動脈硬化 / 小胞体ストレス / 酸化ストレス |
研究概要 |
本研究の目的は、動脈硬化の形成における、小胞体ストレス応答や炎症反応、酸化ストレス反応といった生体内反応が相互に影響を及ぼしあうことの重要性を検討することである。二年目である平成25年度は、これまでに得られたWFS1欠損マウスの動脈硬化進展傾向を確認するため、検体数を増加し検討を行った。即ち、カフ傷害による内膜肥厚モデルとアポE欠損マウスを背景にした粥状動脈硬化モデルについて、それぞれ50匹以上の検討を重ね、WFS1欠損群において有意な内膜肥厚と粥状動脈硬化面積の増加を認めた。 培養細胞を用いたWFS1遺伝子のノックダウンによる検討や、単離マクロファージを用いた検討では、WFS1発現抑制あるいは欠損細胞において、酸化ストレスや炎症反応、小胞体ストレス応答の亢進を認め、WFS1欠損マウスの動脈硬化進展の表現型の機序のひとつであると考えられた。 動脈硬化進展において、血管壁構成因子あるいは血球構成因子のいずれのWFS1の寄与度が大きいか検討するために、骨髄移植を行い解析をおこなった。カフ傷害による反応性内膜肥厚を検討したところ、血球細胞にWFS1を欠損したマウスでは、内膜肥厚が有意に進行していたことから、炎症反応性血管リモデリングには骨髄細胞由来のWFS1が重要であると考えられた。また同様の骨髄移植による検討を粥状動脈硬化モデルでおこなったところ、血球細胞のみにWFS1を有するモデルでも、血球細胞にのみWFS1を欠損したモデルでもほぼ同等の動脈硬化を認めたことから、粥状動脈硬化の進展に対しては血球、血管双方のWFS1が同程度寄与していることが示唆された。 H25年度の研究から、血管障害・動脈硬化の進展においてWFS1が重要な役割を果たしており、炎症反応性血管リモデリングと粥状動脈硬化の進展に対しては、異なった組織のWFS1が作用していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究目的は、おおむね順調に達成していると判断している。 WFS1欠損が動脈硬化惹起性に作用することを数多くのマウスを用いた実験を行うことで確かな傾向を得て、自信を持って研究を進めることができた。 また骨髄移植の検討により、血管障害・動脈硬化の進展における、異なった細胞・組織のWFS1の役割について解析を進めることができたのは、大きな進歩であると考えている。粥状動脈硬化モデルであるWFS1・アポE二重欠損マウスの育成には時間を要するため、骨髄移植に供することができた匹数は少なかったが、次年度はさらに解析可能な検体が増え、データを蓄積していけるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス血管壁全体における、生体内ストレス応答遺伝子の発現を検討してきたが、今後はレーザーマイクロダイセクションの手法を用いて、内膜肥厚部や粥状動脈硬化部を限局して採取し、遺伝子発現を検討していきたいと考えている。 また細胞レベルでも、WFS1欠損マウスから採取した腹腔Mφを血管内皮細胞と共に培養することで、MφのWFS1が分泌物を介して血管内皮に対してどのような作用を及ぼしているか、接触共培養とトランスウェルを用いた非接触共培養の条件で検討していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
少額にて、端数まで合致した物品の購入が不可能であったため。 次年度において試薬等の物品費の一部として使用予定である。
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