研究課題
本研究の目的は、動脈硬化の形成における、小胞体ストレス応答や炎症反応、酸化ストレス反応といった生体内反応が相互に影響を及ぼしあうことの重要性を検討することである。最終年度である平成26年度は、これまでカフ傷害モデルや粥状動脈硬化モデルから得られたWFS1欠損マウスの動脈硬化進展のメカニズムを解析するため、血管壁での遺伝子解析と培養細胞における検討に多くの時間をかけた。カフ傷害によって内膜が肥厚した部位での遺伝子発現をWFS1の有無で検討したところ、肥厚の進展しているWFS1欠損群においてMCP-1やIL-6といった炎症性因子、またSDF-1αやPDGF-Bといった平滑筋増殖因子の発現が増強していることが明らかとなった。一方で、粥状動脈硬化の進展がみられる高コレステロール血症WFS1欠損群の大動脈では、同様にMCP-1などの炎症性因子の発現が増強していた。さらにNADPHoxidaseのサブユニットの発現が増強していたことから血管における酸化ストレスの増強が推察され、その結果と思われるがSODやcatalaseといった酸化ストレス消去系の発現上昇も認められた。また小胞体ストレス応答関連因子もWFS1欠損群の血管で発現上昇が認められ、WFS1が血管における酸化ストレスや小胞体ストレス応答を調節し、動脈硬化の進展にも重要な役割を果たしていると考えられた。また血管内皮細胞や血管平滑筋細胞といった培養細胞において、siRNAを用いてWFS1をノックダウンしたところ、内皮細胞では接着因子の発現亢進が、平滑筋細胞では増殖因子の発現亢進が認められ、in vitroの検討からもWFS1が動脈硬化に関連する様々な因子の調節に関わっていることが明らかになった。H25年度の研究から、血管障害・動脈硬化の進展においてWFS1が重要な役割を果たしており、炎症反応性血管リモデリングと粥状動脈硬化の進展に対しては、異なった組織のWFS1が作用していると考えられた。
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