臓器恒常性において、各組織を灌流する血管機能の維持は極めて重要を果たしている。各組織の血管は、炎症、代謝、力学的負荷を含む様々なストレスに晒されているが、これら外的ストレスに応じて血管構造が変化することが知られており、血管リモデリングと呼ばれている。その中でも、動脈硬化病変や動脈瘤、および腫瘍内血管構造の再構築過程における未熟な血管形成はプラーク、動脈瘤の破綻や腫瘍内低酸素環境の原因となり、病態進展に大きく関わると考えられている。 本研究では、動脈硬化病変、大動脈瘤および腫瘍内血管形成プロセスをモデルとして、血管リモデリングにおける炎症細胞、特にマクロファージ極性の役割につき解析を行った。動脈硬化病変モデルに先だっておこなった腫瘍血管新生モデルにおいて、下記の知見を得た。1.M2マクロファージに比して、M1マクロファージにおいて血管内皮細胞増殖因子が強発現していること、2.腫瘍増殖に伴いM1マクロファージが腫瘍内に浸潤すること、3.M1マクロファージの集積を特異的に抑制すると腫瘍内血管リモデリングが抑制されること。これらの知見により、M1マクロファージの集積が血管の未熟化過程において重要な役割を果たしていることが明らかになった。引き続き動脈硬化病変プラーク内血管新生、および動脈瘤進展過程においてM1マクロファージ由来の血管新生増殖因子が果たしている役割について解析を行っている。引き続く解析により、マクロファージ極性を介する動脈硬化病異変、動脈瘤および腫瘍血管正常化に向けた新たなアプローチを構築できると期待される。
|