腎機能障害は心血管疾患の進展に寄与している。申請者は最近、代表的な尿毒症毒素であるインドキシル硫酸が白血球と血管内皮細胞との接着を亢進させ、血管障害を悪化させることを見出した。本研究ではインドキシル硫酸による血管炎症増悪のメカニズム、特に炎症性単球の関与に的を絞って研究を進め、慢性腎臓病において高率に合併する心血管疾患発症の予防を目指した研究基盤を確立することを目的とした。 インドキシル硫酸により増加した炎症性単球の血管壁接の増強効果を、インドキシル硫酸を投与したカフ傷害大腿動脈モデルで検証した。生体内可視化システムIVMにより血管壁へ接着する炎症性単球数および白血球数がインドキシル硫酸により増加することが確認できた。さらに、同処置を施したマウスの大腿動脈の切片の観察により、炎症性単球マーカーLy6C陽性の炎症性単球細胞数の血管壁浸潤が著明に増加していることを確認した。これまでに、インドキシル硫酸は肝細胞のアリルハイドロカーボン受容体(AhR)に作用し、薬物代謝酵素発現に影響を与えることが報告されている。そこで、AhRの血管内皮細胞特異的欠損マウスを作成し、インドキシル硫酸による炎症性単球に対する影響におけるAhRの関与を検討した。AhR欠損マウスでは、インドキシル硫酸による末梢血における炎症性単球の上昇、CCR-2などの活性化マーカーの変動が抑制された。これらのデータより、AhRは血管内皮細胞においてもインドキシル硫酸の受容体として作用していることが示唆された。
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