研究課題/領域番号 |
24591117
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北本 史朗 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00380436)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / マクロファージ / シグナル伝達 / 生体分子 / 糖鎖 |
研究概要 |
本研究は、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびO結合型GlcNAc(O-GlcNAc)修飾によるマクロファージ(Mφ)の機能制御および動脈硬化の発生・進展における役割を解明することで、動脈硬化の新しい予防・治療法の確立に資することを目的としている。 平成24年度は主にin vitro実験を行った。培養Mφを薬理学的にGlcNAc、UDP-GlcNAc、グルコサミンあるいはO-GlcNAcase阻害剤PUGNAcで前処置することにより細胞内タンパク質のO-GlcNAc修飾を増加し、Mφ遊走能、コレステロール代謝能、コレステロール代謝関連因子(PPARγ、ABCA1、ABCG1等)発現、M1/M2型Mφマーカー・炎症性サイトカイン(iNOS、IL-1β、IL-6、Arg1、TNFα、MCP-1等)発現の評価を行った。また、必要に応じM1(IFNγ+ LPS)またはM2(IL4)刺激を同時に行った。その結果、GlcNAc、UDP-GlcNAc、PUGNAc処理によりM1型Mφマーカー・炎症性サイトカイン発現の減少とM2型Mφマーカー発現の増加を認めた。コレステロール代謝能、コレステロール代謝関連因子に関してはRAW264.7細胞においてABCA1発現増加や泡沫化抑制傾向を認めたが、初代培養 (マウス腹腔内および骨髄由来) Mφでは有意な差を認めなかった。但し、ウェスタンブロット法による評価では各処置によるO-GlcNAc修飾増加が不十分であった可能性を否定できなかった。また、O-GlcNAc転移酵素(OGT)過剰発現実験およびsiRNAによるO-GlcNAcaseの特異的発現抑制実験を実施し更なる検討を行った(進行中)。 以上、今年度の研究によりMφにおいて細胞内タンパク質のO-GlcNAc修飾は少なくともMφのM1型活性化を抑制し抗炎症的に働くことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度においてOGT遺伝子過剰発現実験(OGT遺伝子過剰発現ベクターは作製済み)およびsiRNAによるO-GlcNAcaseの特異的抑制実験の結果を得る予定であったが、一般的にMφの遺伝子導入効率が非常に低いこともあり、これまで十分なOGT遺伝子過剰発現やO-GlcNAcase遺伝子発現抑制が得られなかったため、平成24年度中に結果を得ることができなかった。また、GlcNAc、UDP-GlcNAc、PUGNAcを用いた薬理学的実験でもO-GlcNAc修飾の増加が軽度にとどまり、年度内にO-GlcNAc修飾を受ける細胞内タンパク質の特定までには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
GlcNAc、UDP-GlcNAc、PUGNAcを用いた薬理学的実験では、O-GlcNAc修飾の増加が不十分であった可能性を否定できず、今後、更に実験条件(薬剤濃度や処置時間)の至適化を試みる予定である。OGT遺伝子過剰発現実験およびO-GlcNAcase siRNA導入実験に関しては、これまで遺伝子導入法として脂質ベースの遺伝子導入試薬(Lipofectamine LTX、Lipofectamine RNAiMAX等)を使用していたが、その後の検討によりエレクトロポレーション法(Invitrogen, Neon transfection system)で遺伝子導入効率の改善が認められたため、今後は同法を用いて遺伝子導入実験は実施する方針である。また、平成25年度より当初の予定通り動脈硬化発症LDL受容体欠損マウスを用いた動物実験を実施することとしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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