研究課題
本研究は、マクロファージ(Mφ)の機能制御および動脈硬化の発生・進展におけるO結合型GlcNAc(O-GlcNAc)修飾の役割を解明することにより、動脈硬化の新しい予防・治療法の確立を目指すことを目的とする。前年度の研究業績において、培養Mφにおける細胞内タンパク質のO-GlcNAc修飾増加がM1型活性化を抑制し抗炎症的に働くことが薬理学的実験結果から示唆された。平成25年度は、in vitro実験において遺伝子特異的な処置 [O-GlcNAc転移酵素(OGT)遺伝子過剰発現、siRNA導入によるO-GlcNAcase遺伝子発現阻害]によるO-GlcNAc修飾増加実験を行い、更なる検討を行った。OGT遺伝子導入にはエレクトロポレーション法を使用し、初代培養 (マウス腹腔内および骨髄由来) Mφは遺伝子導入効率・生存率ともに不良であったためRAW264.7細胞のみ有意な結果が得られたが、薬理学的実験結果と同様にOGT遺伝子導入による細胞内タンパク質のO-GlcNAc修飾増加によりM1型Mφマーカー・炎症性サイトカイン発現の減少を認めた。siRNA導入実験では、有意な一定の結果を得る事ができなかったが、O-GlcNAcase遺伝子発現抑制が不十分であった可能性を否定できなかった。また、O-GlcNAc修飾を受ける細胞内タンパク質の特定を行った結果、O-GlcNAc修飾増加処置はNF-κB活性を抑制すること(レポータージーンアッセイ)、NF-κB p65蛋白のO-GlcNAc修飾を増加すること(免疫沈降)、が認められた。以上の結果より、MφにおいてO-GlcNAc修飾は、転写因子NF-κB活性の抑制を介してM1型活性化を抑制し抗炎症的に働くことが示唆された。さらに、平成25年度は動脈硬化発症マウスを用いた動物実験の実施を開始したが、解析結果を得られるまでには至らなかった(現在、進行中)。
3: やや遅れている
平成24年度のin vitro実験において当初目標としていた実験結果が得られず、平成25年度まで継続が必要となったため、実験計画全体の進行がやや遅延している。
平成26年度は、当初の研究計画の最終目標の達成を目指してin vivo実験を重点的に実施する予定である。
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