研究課題
本研究は、マクロファージ(Mφ)の機能制御および動脈硬化の発生・進展におけるO結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾の役割を解明することにより、動脈硬化の新しい予防・治療法の確立を目指すことを目的とする。前年度までのin vitro実験の研究成果により、培養MφにおいてO-GlcNAc修飾は転写因子NF-κB活性の抑制を介してM1型活性化を抑制し、抗炎症的に働くことが示唆された。平成25年度は主としてin vivo実験を実施した。8週齢の動脈硬化発症ApoE欠損マウスにGlcNAcを経口投与[投与量0.25 mg/ml(約50 mg/kg/日)]、もしくはO-GlcNAcase阻害剤PUGNAcを浸透圧ポンプにより投与(10mg/kg/日)し、O-GlcNAc修飾の増加処置が動脈硬化に与える影響を検討した。西洋食(40%脂肪、0.15%コレステロール)を6週間投与後に組織におけるO-GlcNAc修飾増加を確認し、大動脈基部および大動脈の動脈硬化病変を評価した。その結果、予想に反し対照群とO-GlcNAc修飾増加処置群間において動脈硬化病変のサイズ・性状に有意な差を認めなかった。最近、高血糖がMφにおいてO-GlcNAc修飾を介してNF-κBの活性化を促進し前炎症性Mφを誘導するとの報告がなされていることから、in vitro実験においてグルコース濃度の影響を検討したところ、高グルコース条件下では前述のO-GlcNAc修飾の抗炎症作用は減弱した。以上の結果およびApoE欠損マウスでは西洋食投与により血糖上昇を来すことから、in vivo実験において動脈硬化病変に差を認めなかった理由として高血糖の影響が考えられた。なお、当初計画していたMφ特異的O-GlcNAc転移酵素過剰発現マウスは最終年度中に得ることができず、組織・遺伝子特異的なO-GlcNAc修飾増加実験は実施できなかった。総じてO-GlcNAc修飾はMφの炎症性フェノタイプを病態に応じて複雑に制御しており、動脈硬化において併存疾患により二面的(抗炎症性・炎症促進性)作用を有することが示唆された。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Vascul Pharmacol.
巻: 61 ページ: 49-55
10.1016/j.vph.2014.03.006.