研究課題/領域番号 |
24591118
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平野 真弓 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80336031)
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研究分担者 |
平野 勝也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80291516)
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キーワード | トロンビン受容体 / 脱感作障害 / 平滑筋細胞A7r5 / 血管内皮細胞 / 血管透過性 / ミオシン軽鎖リン酸化 / アクチン繊維束 / トロンビン |
研究概要 |
1.脱感作障害の分子機構を明らかにする。 脱感作モデル細胞として確立したラット大動脈平滑筋細胞A7r5は、トロンビン反応の持続や、PAR1活性化ペプチドによる反応性の繰返しを有した。この反応に対してRho kinase阻害剤は効果がなく、トロンビン受容体の脱感作障害にRhoキナーゼは関与しないことが明らかとなった。一方、NADPHオキダーゼ阻害剤およびERK阻害剤は、 PAR1活性化によるCa2+反応を、一過性、非反復性、可逆性の反応に転換した。以上の結果から、PAR1の脱感作障害には酸化ストレスとERKが重要な役割を果たすことが示唆された。 2.動脈硬化症の初期病変形成から進展に亘るトロンビン受容体の役割を明らかにする。 トロンビン刺激は、内皮細胞の血管透過性亢進(バリアー機能破綻)や平滑筋細胞の増殖を惹起して動脈硬化初期病変形成に重要な役割を果たす。 内皮細胞をトロンビン刺激すると、ミオシン軽鎖1リン酸化と2リン酸化が増加し、2リン酸化とアクチン繊維束形成が細胞膜直下に生じることを見出した。本年度はアデノウイルス発現系を用いて内皮細胞の透過性亢進におけるミオシン軽鎖1リン酸化と2リン酸化の役割を明らかにした。透過性亢進には、細胞膜直下における1リン酸化とアクチン繊維束形成だけで十分であること。しかしながらトロンビンによる透過性亢進は、2リン酸化を抑制した場合にのみ改善できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.トロンビン受容体の活性制御異常の分子機構の解明 H24年度に確立した脱感作障害モデル細胞を用いて、H25年度は脱感作障害と酸化トレスとの関与および脱感作に関わる因子の同定を行った。その結果、トロンビン受容体PAR1の脱感作障害には酸化ストレスとERKが重要な役割を果たすことが示唆され、脱感作障害の機序にかかわる詳細を明らかにできる見通しを立てることができた。 2.動脈硬化症の初期病変形成から進展に亘るトロンビン受容体の役割解明 H24年度に確立したミオシン軽鎖リン酸化部位変異ミュータントのアデノウイルス発現系などを用いて、トロンビンによる血管透過性亢進における内皮細胞のミオシン軽鎖のリン酸化の役割を明らかにすることができた。さらにトロンビン受容体活性化から内皮細胞の収縮、透過性亢進に至る機序の詳細を明らかにできる見通しを立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.トロンビン受容体活性制御異常の分子機構の解明 H25年度にERKの阻害により脱感作機構が回復することを明らかにした。脱感作障害モデル細胞のトロンビン受容体のリン酸化にかかわる酵素を同定する。また、GRKやβアレスチンの発現、受容体の脱リン酸化酵素の発現や活性変化などをタンパク質の阻害剤やRNA干渉法などの手法を用いて解析し、トロンビン受容体のリン酸化、脱感作に関わる分子を明らかにする。 動脈硬化モデル動物などのトロンビン受容体の発現を解析し、病変形成や進展とのかかわりを明らかにする。 2.動脈硬化症の初期病変形成から進展に亘るトロンビン受容体の役割を明らかにする。 トロンビンによる内皮バリアー機能障害におけるミオシン軽鎖リン酸化の役割を明らかにした。H26年度は、リン酸化酵素や接着分子などのシグナル分子を同定し、トロンビン受容体の活性化からミオシン軽鎖リン酸化、透過性亢進に至るまでのシグナル伝達機構を明らかにする。さらに動脈硬化に関わる因子などを作用させ内皮細胞バリアーに及ぼす影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、H24年度の計画で使用するはずの培養細胞用の血清の使用が少なく、H24年度予算をH25年度に繰り越したためである。H25年度に関しては、ほぼ計画通りの予算を使用した。さらに、H24年度分の繰り越し金額の半分を使用した。したがってH26年度にH24年度の繰り越し金額の半分が繰り越されたことになる。 細胞培養用血清を含む細胞培養試薬に30万円、細胞培養器具(透過性実験に用いる培養器具、簡易型恒温装置など)30万円。抗体、プロモーター解析用試薬、RNA干渉(核酸合成)、遺伝子導入試薬に45万円。病態モデル動物購入(飼育料を含む)に20万円。国際学会での成果発表に20万円を使用する。
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